イッシュの狂戦士は (ページ30)

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「………」

開けっ放しにしていた窓をしっかりと施錠して、何事も無かったかのように眠ろうとした少女だが、先程の出来事に少なからず驚いており、眠れなかった。

最悪窓をぶち破ってキバナが部屋に入ってくる事を考えていた少女は、ベッドではなく扉にもたれかかっていた。

そうして過ごして居るうちに、どんどん少女は怒りが
自分の中にふつふつと湧き上がってくるのを感じた。

どうして悪いことをしてないのに追いかけ回されなきゃいけないのか

どうして今もこうやってあの男を警戒しなければならないのか

…どうして私に構うのか。

最初はすぐに飽きるだろうと思っていたが、飽きる気配はなく、あろうことか距離を詰めてこようとする。

技を当てた事が気に食わないのなら殴ってくれても構わない。私のくだらない肩書きが気になるのならわざと負けてやる。

ポケモンの事でいっぱいで、それが幸せだった少女の領域に、あの男が入ってくるのは嫌だと。

嫌だと、分かっているのに…

「…鬱陶しい。」

嫌いになりきれない少女は、自分の中の矛盾と戦う。

「……そうだ、負ければ、いいんだ。」

戦うことを回避できないのであれば、負ければ良いのだと。

しかしそこで問題になってくるのが、ポケモンを故意に傷付けてしまうこと…

「……。」

少女はバッグからキュレム以外のポケモンを出す。

「…ごめんね」

思い詰めた表情でいきなり謝る少女に、ポケモンたちは不思議そうな表情をする。

「私は、自分の為に、みんなを傷つけちゃう。」

キバナの前で戦闘不能になるポケモンたちを想像しただけで少女の目の奥は熱くなる。

『ジャロ！』

「いてっ、」

そんな少女に、ジャローダはずつきをして、目線を合わせる。

「ハシモト…」

お前がわがままなのはずっと見てきたと言わんばかりに尻尾でペシペシと叩かれる。

他のポケモンも、やられたフリをしてみたり、少女に対して前払いだと言わんばかりにテシテシと叩いた。

「…ありがとう、帰ったらみんなが好きなジョウト地方に行こうね」

そう言うとポケモンたちは嬉しそうに部屋を駆け回った。

「へへ…」

ジョウト地方なら、自然が多いため、キュレムを出してもそうバレることはない。

最早バトルのことはそっちのけで、ジョウト地方で何をするか計画することで頭がいっぱいになった。