イッシュの狂戦士は (ページ26)

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ファンたちはキバナのあとを着いてきたが、少女だけが単独行動。これはキバナも予想していたこと。

だからファンたちにトイレへ行くと言い、少女が居そうな場所へ足を向ける。

「あはは！！ゴメンって！」

からからと楽しげに笑う声が耳に届き、どうやら少女は足湯の方へ居るらしいと歩を進める。

『フンフカ！』

という鳴き声と、何やらバシャバシャと水遊びをしているような音が聞こえる。

「キサラギ～許してよ！！」

見ると、フカマルがばちゃばちゃと少女にお湯をかけており、お湯をかけられながら手探りでフカマルを捕まえようとびしょ濡れになって笑う少女。

その楽しげな瞳は、ポケモンにしか向けられない、楽しげで、無垢で、眩しいもので。

その瞳が興味を示すのはポケモンの事だけなのだと薄々気付いているキバナは、しかしそれが何だと、関係ないと。大真面目に、純粋に、

俺の色に染めたい。

と思った。

「捕まえた～！ちょっと！！キサラギのせいでびっちゃびちゃ！」

責めているようで全く責めていない声色でフカマルに凄む少女だが、互いに数秒目を合わせ、にこりと笑いあう。

傍観していたジャローダも、やっとおわったか、というふうに少女のバッグからタオルを漁りだし、頭に乗せる。

「ハシモト気が利く～！」

グリグリと抱きしめる少女をなれたようにあしらい、早く拭け、と言うように動きで催促する。

これがコイツらの絆で、日常茶飯事に行われていることなのだと容易に想像がついた。

「服が重い…」

少女は水を含んでずっしりと重くなった服を雑に絞り、そしてあろうことか脱ごうとした。

「おい待て、脱ぐな！風邪引くぞ」

柱に凭れて様子を見ていたキバナも、流石にこれは見過ごすことが出来なかった。

「…替えの着替えに替えようと思っていただけですが…」

突如現れたキバナへぎこちなく返事をする少女と、威嚇するフカマル、興味すら示さないジャローダ。

分かっていたこととは言え、少女の態度のあまり温度差に少し傷付いた。

が、そこで怯むキバナではない。

「今日はもうホテルへ行くだけだ。こんな時間だしな。」

「あ、ほんと…、…クシュっ！」

そう言われて周りを見る少女は、すっかり薄暗くなった景色を見て、思い出したようにクシャミをした。