イッシュの狂戦士は (ページ24)

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「可愛い顔してんだから、隠すのは勿体ないぜ？」

そう言ったキバナの言葉に、ファンなら顔を赤らめさぞ喜んだでしょうね、と心の中で毒づく。

だが少女からすればいかにも女性慣れしてそうな、甘い言葉を息をするように呟くこの男の事を、1ミリも信用していない。

真剣に女性ものの服を選ぶこの男がどれだけ女性ファンを歓喜と地獄に落としているのか見なくても分かる。

だから適当に相槌をうち返事をするのだ。

「そうですか。」

元々身長差がある為、キバナからは少女のつむじと長いまつげしか見えてないだろう。

「あ、ちょっと待ってな。」

どこかに目をやり、めぼしいものを見つけたのか、少女を一旦1人にして、姿を消した。

今ならまだ出口がどこか覚えてるから出ていこうか、と少女が考える間もなく、直ぐに戻ってきて、少女の体に服を当てる。

……ピカチュウの着ぐるみを。

「…………これでいいですよ。可愛いですもんね。じゃあお会計で。」

半目になりながらもパジャマにいいかもしれないと本気で会計へ向かおうとする少女をキバナは笑いながら止める。

「悪い悪い、似合いそうだなって思ったんだ。」

微塵も悪いと思っていなさそうな程笑うキバナに、少女はやれやれと首を振る。

「別にこれでいいですよ。ありがとうございます。」

「おい、冗談だって、これはナシだ！」

強引に少女から着ぐるみを奪い取ると、元の場所へ手早く戻した。

しばらく付き合い、やっと少女へ渡す服を決め、少女に手渡す。

「試着室で着て、着たら俺に見せろよ。」

と言い試着室へ少女を押しこんだ。

少女は自分に似合うかどうかもよく分からず、言われたまま着替えをする。

少女には少し大きいサイズのブカブカとしたジャーマングレーのパーカーに、ブラックのスキニー。

キャメルのキャップを付けると、少女好みの動きやすい服装になった。

「どうですか？」

言われた通り試着室のカーテンを開けて腕を広げてキバナに見せる。

見やすいようにクルクルと回ってキバナの反応を見る。

「…、」

「……あの？」

何も言わないキバナに、似合っていないのかと少し不安になる。