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「...あなたの...」
「ん？」
「あなたのファンの視線が痛いので離れて下さい。」
キバナはそこでようやく、ファンも同乗している事を思い出した。
不躾に少女をジロジロと見ているファン達の視線を鬱陶しそうに受け流す少女。
「...みんなの所回るからな〜」
取り繕うように愛嬌のある笑みを浮かべ、席を立ったキバナに、少女はようやく居なくなった、と言わんばかりに窓の外の景色に視線を移す。
「油断してんじゃねえぞ、また来るからな。」
少女にだけ聞こえるようにそう警告したキバナに、少女はため息で返す。
余裕たっぷりのその態度に形の良い眉を動かしたキバナだが、ファンがいる手前、少女だけを相手にする訳にもいかず、前の席へ戻る。
(やっといなくなった...)
キバナが前の席へ戻るのを確認すると、少女はバクバクと破裂しそうな程早い脈を打っている心臓を抑えた。
ファンからの視線もそうだし、あれほどまで異性と近づいた事は無かったから。
キバナが節操のない男には見えないが、女慣れしてそうな雰囲気をひしひしと感じ、手のひらで遊ばれてる気がして癪に障る。
極めつけには、キバナの付けている香水なのか、柔軟剤なのか、どちらにせよとても良い香りが少女の服に残っており、マーキング...という言葉が頭をかすめた瞬間に首を振って否定する。
どうしてここまで私に...と考えるが、ポケモン技を当て、そのまま逃げた前科がある少女は、思い当たる節がありすぎて頭が痛くなってきた。
(1番は、私がイッシュの狂戦士とかいう、下らない肩書きがあるからなんだろうな。)
冷静になってきた頭で思いつくのは結局それで。
これは少女が注目を浴びたくないと噂をそのままにしていたせいでもあると痛感する。1度もその姿を見たことがない大衆は、逆にそのミステリアスさに惹かれている所もあるのだろう。
(現実は、ただのポケモンバカなのに)
グルグルとそんな事を考え、眉を顰める少女は、今すぐ外に飛び出してみんなと遊びたい。とボールを撫でる。
その際ポトリとツアーの案内の紙が落ち、拾って改めて内容を見ていた少女は、
「.......え？」
自身が見逃していた文章を読み、過去の自分を殴りたくなった。
勝利の際、ガラル地方ボックス解放！
...
...
...
...
2泊3日の旅を楽しめ！！
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作者名：ワシボン | 作成日時：2021年11月5日 20時
