イッシュの狂戦士は (ページ20)

今日:5 hit、昨日:16 hit、合計:56,730 hit

:20 ページ20

__3番道路の預け屋にフカマルを預けたトレーナーは、預け屋の主人に”育てる余裕がない”と伝えて、それ以降迎えに来ないのだという話を育て屋の隣にある保育園の保育士から聞き、少女はそんな勝手な話があるものなのかと憤った。

育てる余裕が無いのならボックスに入れておけばいい。わざわざ育て屋に預ける理由はなんなのだと。

｢おばあちゃん。フカマルに会わせてください。｣

｢…あの子は少し噛みグセのある子でねえ…あんまり近づいちゃダメだよ｣

「分かりました。」

無論、少女のことだ。平然と了承しておきながら、最初から警戒するフカマルにズンズン近付き、抱きしめにいった。

『フカ！フカカ！』

ガジガジと肩を噛まれても気にせずに、そのまま恐ろしい力でフカマルを出口まで連れていく。

「Aちゃん、どういう…」

「連れて帰ります。今日から私の子です。」

預け屋の主が否と言う暇も与えず、そのまま自分の家まで抱いて帰った。

『フカー！』

家に連れ帰り、フカマルを離した少女に、フカマルは短い腕を精一杯上げて威嚇をする。

しかし、

「え！？メロメロ覚えてるの？可愛いね～！」

少女にとって威嚇はメロメロと同じようなもので、全く意味を成さない。

フカマルは先程ヒトと話していた時の少女と自身に笑いかける少女が本当に同一人物なのか理解出来ずにこんらんした。

そんなフカマルにお構い無しに、ズイっと顔を近付け、花が咲くように笑う。

「今の季節、他地方じゃ”如月”って言い表すんだって、だから名前はキサラギね！」

『フカフカ…！』

「うんうん、キサラギ！今日からよろしくね」

それから少女とフカマルは一緒に暮らすようになった。

少女はフカマルをよく他のポケモンとバトルさせたが、フカマルが進化を拒む事を知ると、進化しなくても大丈夫と伝えた。

少女はもう、ガバイトとガブリアスをボックスに預けていた。図鑑なんてとっくの前に埋まっていたし、図鑑を埋める為に引き取ったんじゃないとよくフカマルに話していた。

「キサラギを置いていった人なんて忘れて、私と友達になろうよ！」

そう言う少女の周りに親は居らず、代わりにポケモンが沢山いた。

どのポケモンも少女を親のような、或いは友達のような目線を向けており、それだけで少女が愛情深い人間だとわかった。