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しかし男のその嫌味な程の長い脚で、簡単に距離を詰められてしまう。
｢…なんですか。｣
焦った少女の口から出たのはそんな言葉で。
｢なんですかって…参加者をみすみす逃がす真似はしたくないからな。｣
少女が逃げようとしている事に気づいてるキバナは、その言葉と同時にその細腕を掴んだ。
｢は、離してください！｣
少女は少女で、さらに鋭くなったキバナの目と、ファンの射抜くような視線に目を白黒させて、振りほどこうとするが、どんなにもがいても、その体格差と、強い力に抗えず、半分泣きながらポケモンを出した。
『フカカ！』
｢うお！？フカマル！｣
2人の足元に出てきたフカマルは、少女が困ってる顔をしていること、少女よりもずっと大きいガラの悪い男が少女をいじめているのだと思い、その口に大きなパワーを込める。
｢あっ、キサラギ、破壊光線はダメ！｣
少女がすかさず止めると、フカマルは渋々と言った様子で、少しだけ溜まったパワーをポフリと口から出した。
そして代わりにキバナに精一杯の威嚇をした。
しかしこれはキバナ相手には悪手だったのかもしれない。何しろキバナはドラゴン使いのジムリーダー。
｢血気盛んなフカマルだなぁ！｣
少女から腕を離したキバナは、大きく、無骨な手でフカマルの頭を撫でるが、フカマルのそのさめはだで少し手に傷が付いてしまう。が、気にせずにフカマルを抱き上げる。
フカマルは愛らしい顔を精一杯怒りの表情に変え、キバナに噛みつくが、数多のドラゴンを手懐けてきたキバナにはなんの効果も無かった。
｢…キサラギを離してください。｣
先程とは打って変わって冷静な声でキバナを見つめる少女の瞳は、静かな怒りを含んでいた。
｢…悪い｣
フカマルを少女に返したキバナは、バツが悪そうに少女の顔色を伺う。
｢ごめんねキサラギ…｣
『フカ！』
フカマルは気にしてないという風に少女の顔に頭突きをした。
少女はその頭突きが強がっている時にやるクセだということを知っている。
｢キバナ様、時間です。｣
気まずい雰囲気を変えたのは、眼鏡を掛けた男性のその一言だった。
｢そうだな…全員集まってるな？じゃあ行くぞ｣
キバナはパッと表情を変えて、少女の背中を押す。
抗議をしようとした少女が何かを言う前に、キバナは笑う。
｢今は楽しもうぜ、話は後で聞く。｣
その言葉に、抗議の言葉を飲み込み、ツアー専用と書かれた車両を目指した。
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作者名：ワシボン | 作成日時：2021年11月5日 20時
