イッシュの狂戦士は (ページ12)

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ワイルドエリアに着いたキバナは、少し歩いてすぐに目当ての人物を見つけた。

明らかにテントを張るのに慣れていないのが丸わかりで、最後の仕上げの為のシートを掛けられずに、何度も頭から被っては憤慨していた。

その様子にキバナ少し笑いながら、手を貸してやることにして近づいた。

「大丈夫か、ボウズ。」

そう声を掛けるも、

「お構いなく。」

冷めた声で返された。

イッシュ地方独特のイントネーションがあるが、どうやら言葉は通じるらしい。

その言葉を軽く流して、代わりにシートを掛けてやり、後ろを振り向く。

「……………………ありがとうございます。」

たっぷりの間をあけて、気まずそうに礼を言う。

早くどこかに行ってくれという思いがヒシヒシとキバナに伝わるが、キバナは楽しそうに目を細め、言葉を発する。

「…………。」

「ここいい場所だな～、オレさまもここにテント張るか。」

「なっ…」

こんな広い場所でわざわざ隣に張る必要は無いだろうと言いたげな少女の視線を無視して、キバナは手際よくテントを張り始める。

と、同時、少女は逆に片付ける為、先程掛けたばかりのシートに手を伸ばす。

「おいおい、それはあんまりじゃねえか？」

人懐っこく笑うキバナの笑顔に少女は動きを止めて、渋々と言った様子でテントの中に入っていった。

(なに、なんなのあの人、すごい話しかけてくるんだけど…)

テントの中に入った少女は、バクバクと鼓動する胸を押さえ、苦い顔をする。

(なんでわざわざ隣に…？人気者っぽい人と関わりたくないんだけど…)

明らかに女性ファンが多かったよね、と朝の出来事を思い出して、頭を抱える。

「偶然だとしても運が悪すぎる……」

ボソリと呟くと同時、スマホロトムが着信を知らせた。

画面を見ると、

「…はぁ」

少女がいくら冷たい態度を取ってもめげない物好き博士からだった。

「なんですか、今忙しいんですけど。」

全くもって忙しいことは無い。ただ、アララギの電話は基本説教が8割の為、少女はアララギと電話するときは口癖のようにそう言うのだ。

そして適当に相槌を打っていつも話してる最中に切る。

案の定今回も説教のパターンだったので、20秒も経たないうちに通話を切った。

アララギの事は嫌いではないが、お節介が過ぎる、と少女は苦手意識を持っている。

そんなアララギよりも一味も二味も厄介な男に絡まれていることを、少女はまだ気づいていない。