イッシュの狂戦士は (ページ11)

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「大丈夫か、ボウズ。」

ピシリと、少女は固まった。

「ありがとね！みんな！！」

スマホロトムでテントの張り方を調べ、力作業はポケモンと一緒にやり、残るはシートをかけるのみとなった。

「無駄にでっかいなぁもう…」

文句を吐きながらシートを掛けようとするが、如何せん身長が足りずに、そもそも掛けることが出来ない。

「ハシモトが乗ったら壊れるし…シュラ…もダメだ…ウスイは燃やすし…キサラギは多分遊び出すから駄目…」

少女は私がやるしかないんだ、と拳を握り、もう一度シートをなんとか掛けようと頑張る。

しかし、

「ぶわっ…も～！！」

何度も言うが身長が足りなさすぎる。頭からシートを被るように転んだ少女は、ヤケになってシートを掛けようとするが、結局掛けられない。

何度頭から被ったか分からないシートをそのままに、少女は疲れて座り込む。

その時。

「大丈夫か、ボウズ。」

ぬっと、頭上に大きな影ができる。

少女はピシリと固まり、しかし後ろを振り返る事無くただ一言、

「お構いなく。」

と返した。

少女自身何度も少年に間違われる事はあったが、ボウズ呼ばわりは初めてだと、へっ、と笑う。

「シート掛けられないんだろ？オレさまが掛けてやるよ。」

お構いなく、と言った少女の言葉が聞こえていなかったのか、少女の返事を聞く前に少女からシートを取って、あっという間に掛けてしまう。

少女が何十分もかけて出来なかったことを一瞬でやってしまった男に少女は少し唇を尖らせ、ハッ、と目を瞠る。

(この人、朝の)

黒を基調とした服に着替え、サングラスを掛けていようと、その身長まではごまかせない。

少女はギギギ、と首から軋むような音が出る感覚に陥りながら顔を逸らす。

(もう顔が見えないくらい薄暗いから、多分大丈夫…！)

だと、信じたい。

*

「ここは…巨人の鏡池の近くか。」

少女のSNSが更新されないかこまめに確認していたキバナは、最新の投稿を見て直ぐにワイルドエリアへ向かう。

着替えてすぐ探しに行くよりも、どこにいるか確認してからの方が確実だという考えは見事に当たり、キバナは投稿された写真を見て笑みを深めた。

「…観光だけして帰るなんて、つまらねえ事は言うなよ。」

画面を見てそう呟くキバナをよそに、少女はその時、テントの張り方を必死に調べていた。