イッシュの狂戦士は (ページ1)

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＂イッシュの狂戦士＂

その名は、遠く離れた地方まで伝わる、とある人の異名。

その名を聞いた人々の多くは、筋骨隆々で、数多の歴戦をくぐり抜けた無骨な男を想像する。

しかし実際は…

｢お菓子あげちゃおっかな～？？……やっぱりあげなーーい！おー！美味しい！！あっ、ごめんハシモト…｣

ハシモト、と呼んだジャローダにちょっかいをかけてカラカラと屈託なく笑う年頃の少女であった。

｢ごめんごめんまってー！ほらこれ！ほら！美味しいポフレ！！この前ホウエン行った時に作ったやつ！あぼァっ、｣

どう見てもまっ黒焦げのそれを必死にジャローダに見せつけご機嫌取りをする少女は、今度は足元にいたダンゴロに躓き、盛大に転んだ。

｢…………｣

『ジャロー……』

上唇を噛んで独特な表情をする少女に近付き、まるで子供をあやす父親のように尻尾で撫でるジャローダに、少女はすぐにまたニコニコと笑い、ジャローダを強く抱きしめる。

｢ありがとーハシモト！んまっ！｣

そのまま投げキスを飛ばす少女にまるで人間のように呆れた顔をしてあしらうジャローダは、ふと玄関の方を見て、何かを伝えるように少女に鳴きかける。

それと同時に、来客を伝えるチャイムが鳴り、少女は表情をスっと切り替えた。

薄手のパーカーを羽織り、マスクをつけ、フードを被る。

パッと見男に見間違ってしまうその姿だが、少女は誰と会う時でもこの格好は崩さない。

ろくに玄関の外に居る相手の確認もせずにドアを開ければ、

｢やっぱりアララギ博士か…｣

妙齢の女性がそこには立っていた。

｢やっぱりとは随分なご挨拶ね、A。あなたまた勝手に旅行行ってきたわね！いくらバトルでお金を稼いでるにしても、あんまり旅行はしないようにって言ってるでしょう？それも女の子一人で！｣

Aと呼ばれた少女は面倒くさそうに半目で言い返す。

｢私には相棒たちがいるので大丈夫ですもん。お金だってあんまり使わないように行き来はぺリッパーに乗せてもらってるし…｣

｢海を渡るぺリッパーは温厚な性格だからそれはそれは安全に海の旅が出来るでしょうけれど、嵐でもあったらあぶないでしょう？｣

｢そうですね～。｣

いかにも話を右から左に流しているであろう少女の空返事に、アララギはピクリと眉を動かし、しかし家を訪れた本来の目的を伝えるため、Aにとある書類を手渡す。