《文スト》敵に恋しちゃ駄目ですか？[短編集]

中島敦×マフィア少女 ページ3

今日の御相手は、探偵社の虎くんです！
ちなみに、Aさんはマフィア所属。一応既に知り合い設定です


ーーーーーー


『人虎…！』


状況を説明しよう。
任務の帰り。人気が少なく、薄暗い道で探偵社の人虎と鉢合わせた。
そして、互いに距離を置いて睨み合っている。


「君は、芥川の…」


どうやら私の顔は覚えていても、名前までは覚えていないらしい。
あくまでも芥川先輩の付属品程度に考えられているようだ。
失礼な奴である。


『私はA！“芥川の”ッて呼ぶな、私は付属品なんかじゃない！』


思わず声を荒げると、人虎は思いの外(ほか)素直に謝った。
拍子抜けをして言葉を零(こぼ)した私に、人虎は続けて言う。


「あのさ、その人虎…ッていうのもやめて欲しいなぁ、なんて…」


此奴(こいつ)、芥川先輩に対しては凄い剣幕なのに…
もしや、女だと思って莫迦にされてるンじゃないか。


『人虎は人虎だろう。そんなに呼んで欲しければ、私を倒してから言え！』


愛用の銃を乱射した私の目の前から、人虎が消えた。
否、気配を感じて真後に銃弾を送る。
虎のスピードをナメていたようだ。


『…ッ、』


いきなり景色が回ったと思ったら、ザラザラとした地面に叩きつけられていた。
不甲斐なさに、唇を噛む。


『…殺せ…』


マフィア世界の敗北、之即(これすなわ)ちこういう事だ。
死を覚悟した私から、人虎は慌てて離れる。


「いや、普通に名前呼んでほしかっただけだから⁉︎」


腑抜けた事を。


『中島敦。満足か？』


此(こ)れで、義務は果たした。


「うん、えっと…また会おう」


一瞬で視界に広がる敦の顔。響くリップ音。
顔を染めて走り去っていった彼奴の、名残だけが唇に残って…胸の奥が音を立てた＿＿


ーーーーーー


敦「えっと、星をつけてくれたら嬉しいな…？
そうしたら、今夜きっと…遊びにいくから」

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