吸血鬼にさらわれました。【そらる】【まふまふ】

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目の前の人の、言っていることを信じたくなかった。

否、信じることができなかった。

彼が言っていることの、内容は理解できる。

彼らは吸血鬼だ。私を攫ったのも彼ら。ちなみに魔法が使える。私は求血者(アトラクター)で、私の血には大きな力が宿っている。

全部理解できる。なのに、それを事実として受け止められない。


今ここで分かりましたさようなら、と出て行ける状況ではない。

いつの間にか、手足が震えていた。大抵のことじゃ怖がらなくなったのにな、と考える。


＿＿俺とまふの関係を説明するなら、吸血鬼の生まれ方から説明した方がいいかな


彼が話し始めたので、顔を上げた。


＿＿吸血鬼には二通りの生まれ方があるんだよ

＿＿一つが、元々吸血鬼として生まれる。もう一つが、元々人間だったけど吸血鬼として生まれ変わる。

＿＿俺とまふは後者。ちなみに天月と96猫は前者ね

＿＿俺らは、ほとんど同時期に吸血鬼になったから、その時からの知り合いかな

＿＿お互いに知り合いがいなかったからそのままずっと一緒にいる感じ


一通り話し終えたそらるさんは目を伏せた。

少しやつれたそらるさんの顔を見る。よく見ると、目の下に濃い隈がある。

ずっとまふくんの看病でもしていたのだろうか。そもそも何故彼は目を覚まさないのだろう。

そらるさんと向き合っているだけで腹の底から恐怖が湧き上がってくるのに、色々と考え事をしてしまう。

そもそも何故二人は私を攫ったのだろうか。

自分が、極端に整っている容姿をしているとは思わない。

やはり、私が求血者(アトラクター)だからだろうか。


　『そらるさん……』

彼はどうしたの、と言って此方を見た。

今、この部分だけ切り取れば、何も知らなかったあの頃と同じに見える。


　『どうして……私を攫ったんですか？』


彼は一瞬考え込むように下を向いたが、すぐに私を見ると、


＿＿理由なんて、無いよ


当たり前のようにそう言い放った。

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