桜の花びら五枚目 ページ5
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あんなに、うんざりするほど青かった空が気がつくと真っ赤に染まっていた。
「で、俺は彼奴の予言通り生きていたって訳。」
あの大爆発を生きて生還できるなんて誰が思うだろうか。自分でもあ、死んだなと思ってた程なのに。
本当に死神に嫌われているなぁ。俺は。
「飛び降りた高杉の死体は見つかってないよ。でも、刀と着物の切れ端が見つかってる。あの後火の手が上がってね。俺はどうにか意識があったから逃げられたけど。まぁ、焼け焦げた死体がいっぱいなんだよね。ほぼ灰だからその中の誰かが高杉だとしても多分わからない。」
これで終わりだよと微笑む。そう、これで終わり。
「おわり………」
少女はボソリと反芻するとそっと目を閉じた。
驚く事に少女は泣かなかった。
ただただ、冥福を祈るように目をつぶっているだけ。
つかの間の沈黙が訪れた。鈴虫の声が聞こえる。
やがて少女は目を開けるだろう。
恐ろしいほど綺麗な瞳を。
ふと窓の外の夕焼けを見やる。
昔に、あいつらと畦道を歩いたあの日。
戦場の血。そして、あの爆発。
全てがこんな色だった気がするのだ。
「嘆きつつひとり寝る夜の明る間は
いかに久しきものとかは知る」
静かな呟きが鈴虫に飲まれて消えてゆく。
百人一首だろうか?
残念ながら意味までは知らないが。
何となく『嘆きながら寝るのは久しぶりだと知った』というニュアンスなのかなと思った。
じっと、目を開けぬ少女を見つめる。
彼奴は世界を壊すと言っていた。
有言実行の典型なあの野郎がただのターミナル爆破というテロで終わる筈ないのだ。
希望的観測で彼奴が生きていたとしよう。
しかし、それなら彼奴はそこまで計算に入れるはずだからあれは演技という事になる。
そうとは、思えないのだ。
高杉が死んでいたとしよう。
どうやって世界を壊すのか。スタンド的な何かになるという事か。それなら頼むから近くに来るなよ。いや、彼奴はそんな非科学的なものを信じていなかった。
だから俺は、この少女こそが鍵なのではないかと。
鬼兵隊の母船にただ一人残っていた、非力で幼いこの少女が。
今のように白いベットの上に座り、腕から一本の管がついていたという。
肝臓癌、なんだそうだ。末期の。
無学な俺には良くわからないが、高確率で死ぬ病だそうで。しかも抗がん剤を拒否し続けているとなると………
何にせよ、意図が知りたかった。
高杉が、どうしてこの少女を残したのか。
今日のラッキー高杉さん
萌杉
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キャラメル味(プロフ) - とてもいい話でした、泣きました、感動しました、言葉の一つ一つに重みがあり感動しました!(2回目) (2020年4月29日 2時) (レス) id: e1584a2181 (このIDを非表示/違反報告)
りなりー - ただ一言、ありがとう (2020年3月15日 21時) (レス) id: 45e0f85ae1 (このIDを非表示/違反報告)
山崎照葉(プロフ) - 度々入っている百人一首の意味を調べながら読みました。一首一首に意味があって、話の流れに沿っていたのに感動しました。 (2019年4月20日 11時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - Nightさん» ありがとうございます〜(泣)本当に素人で…ありがとうございます! (2019年2月18日 16時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
Night(プロフ) - とてもいいお話でした!読みながら涙出ていました。本当に良かったです。 (2019年2月17日 19時) (レス) id: a39d20f6cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年2月6日 17時