運命4 * ページ5
「んじゃ、まあ面白い話期待してるぜ」
そう言ってニヤリと笑った若武。
ん、このノリ、久しぶりだなぁ!
高鳴る胸の鼓動は、次の翼の言葉で止まった。
ううん、まるで時間まで止まったみたい。
だって……信じられなかったから。
「じゃあ、俺から話があるんだ。俺……KZ抜けるから」
……は?
KZを…抜ける?冗談だよね、翼?
「何、その冗談。全然笑えねーんだけど?」
引きつった笑みを浮かべる若武に、翼は黙って椅子から立ち、鞄を肩からかけた。
信じられない、とただ固まる私たちを、翼は一瞥する。その目は、今までで一番冷たかった。
「冗談じゃないことくらい、俺の目みたら分かるでしょ?飽きたんだよ、この烏合の集団に」
それじゃあ、と風のように吹き去って行く翼の背中を、黒木君と上杉君、若武が走って追いかける。
でも、暫く信じられなかったから、タイムロスがあった。
きっと、一番速い翼の足には追いつけない。
一方残された私、小塚君、忍は、時が止まったように動かなかった。動けなかった、の方が正しいかもしれない。
どうして……?
翼…貴方は、KZの関係は奥が深くて素晴らしいモノ。前に、そう言ってたのに?
集合がかかるたび、楽しそうに目を輝かせていたのに…?
どうして?
ただ、それだけが渦巻いていた。
どれくらい時間が経ったんだろう。
暗い顔で、黙って椅子を引いて座ったのは翼を追いかけて戻ってきた3人だった。
何も言わない私たちの沈黙が耐えられなかったのか、若武は机を殴った。
ガン、と鈍い音がする。
「なんでだよっ!マジだった……あいつ本気で俺たちから離れようとしてるっ!」
どうして……どうしてっ!
「何でなのっ!翼……」
私の頬を涙が伝った。
それを見た黒木君は、悔しそうに拳を握りしめている。
「絶対理由があるはずだ……アイツの目…深い悲しみの目に見えたんだ…」
悲しみ……
「烏合の集団、そう言う時、苦しそうだった…」
苦しみ……
「別れ際、ゴメン、って目で訴えられた気がしたんだ…上杉の言う通り、苦しそうだった」
謝罪……
そうだ……私たちが翼を信じないで、どうするの?
私たちは仲間……元仲間でも、いい。
「翼の苦しみを分かりたい……翼は、仲間だもん!」
そう言い切った私に、皆は笑いかけた。
ああ、やっぱり皆も分かってるんだ。
翼のあれは、本心なんかじゃないって。
私たちは、仲間。
絶対、連れ戻すよ…翼。
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由希 - 面白い!更新頑張って!楽しみにしてます! (2022年4月10日 20時) (レス) id: 2f26b28cc8 (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - 由香里さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2019年9月9日 17時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
由香里 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月2日 15時) (レス) id: 70dce2c9c8 (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - 吹雪姫さん» ありがとうございます!他の作品も応援してくれて、嬉しいです!!頑張りますね♪ (2019年8月14日 22時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪姫 - 続き頑張ってくださいね!応援しています! (2019年8月14日 18時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みずは翼 | 作者ホームページ:http://mizuha.uranai@tututu
作成日時:2018年12月15日 23時