★6話★ 初出勤 ページ8
扉を開けるとからんからんと心地よく響く音。
扉につけられたベルの音だ。
それに合わせて、カウンターでコーヒーカップを拭いていた男性が振り返る。
オーナーであり、お世話になっているフェリクス・ゾンマーその人だ。
「おう、A、来たか」
フェリクスさんがニッコリと笑って言い、拭いていたコーヒーカップを置く。
「フェリクスさん、おはようございます。住居を面倒みて貰うだけでなく、働き口まで…本当にありがとうございます」
私は、ぺこりと頭を下げる。
「そんな堅苦しくする必要はないぞ。俺とお前のお父さんは唯一無二の友人だからな。ほら、顔上げろ」
私が顔を上げると、フェリクスさんは再度ニカッと笑う。本当、いい人だと思う。
本当に、イケメンだ。
顔もさることながら、性格が特に。
フェリクスさんは、カウンターから出てきて、私に近づき、ポンポンと頭を撫でてくれる。
「俺のことは本当の父親だと思ってくれていいから…っつても、俺、独身だし、子供なんていたことないけどな」
と頬を頬を掻いてから、
「…でも、まあ、仕事はちゃんと厳しくするからそこんとこは容赦しないけどな」
「ありがとうございます。私、頑張りますから」
私が言うと、フェリクスさんは、あははと笑う。
「そいつは心強いな。…とりあえず、仕事に慣れてもらうことから始めるぞ。もうすぐしたら他の従業員も出勤してくるはずだ」
「はい」
「ああ、それから、お前には教育係を付けることにした。リッチって奴なんだが、まあ、少し生意気だが良い奴だ」
リッチさん…。
とりあえず名前は覚えておこう。
なんて思いながら頭の中にメモをする。
大丈夫、覚えることは得意だ。
「でも、そいつ、今日は昼出勤だから、朝のうちは他の従業員の仕事を見学してほしい。リッチが来たら紹介して、そこからはあいつに仕事を学んでくれ」
「わかりました!フェリクスさん…いや、オーナーさんとお呼びするべきでしょうか?」
「どっちでもいいぞ、好きに呼んでくれ。まあ、みんなはオーナーって呼ぶけどな」
再度ニカッと笑うフェリクスさん。
「では、お仕事の時はオーナーさんと呼ばせて頂きますね」
「敬語も別に外してもらっていいのに」
「…ええっと、これは癖みたいなものですし…」
それに、フェリクスさんは年上だし…。
「そうか?それなら、仕方ないが」
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作者名:マリーAI | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Marie-HP/
作成日時:2019年4月22日 19時