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わたしの前に立ちはだかった敵と、現在戦闘中。
今のところ、わたしは劣勢だ。
ライフはほとんど残っていないしマジックポイントも残りわずか。
パーティーも全員死んじゃってるし……!
「さっきから唸ってどうしたの」
あ、仲間が来た!

マグカップを両手に二つ持った一松先生と目が合う。
なぜか誕生日プレゼントのお礼に、と貰ったマグカップは結構な頻度で使われている。
「助けて、一松せんせー。敵が強すぎるの。ボスじゃないのに! 中ボスでもないのに! ただの雑魚のはずなのに!」
「……なんの話?」
敵。それは人類が産み出した謎……。数学である。
一松先生は問題集に視線を移し、ああ、と納得したように呟く。
二つのマグカップを机に置いて、一松先生はわたしの右隣に座る。
白衣から度々見える左手首には、先日わたしがあげた時計がつけられていた。

すると一松先生はわたしの肩に控えめに頭をくっつけて、問題集を覗き込んだ。
「どこ?」
「ぜ、全部です……」
かすかに香ってくる髪の匂いに不本意ながらドキドキしつつ、平静を装って答える。
「一問目はXに数字を代入したら……」
「ああっ、ほんとだ! 次は?」
「これは中学校で習ったものの応用だと思うけど」
「確かに……。これ簡単じゃん」
もはや数字を見るのが億劫になって、どうやら簡単な問題も見逃していたらしい。

ありがとう、と言おうとして視線を横に向ければ、一松先生と目が合う。
「……っ、い、一松先生って賢いんだね、い、意外……」
「先生だからね。意外って失礼」
あーもう、心臓に悪い!
「……宿題?」
「うん、そう。えーっと、誰だっけ……。そうそう、数学のチョロ松先生が鬼すぎるの。宿題多いし説教も多いし!」

「……ねえ、前から思ってたんだけどAさんって人の名前覚えるの苦手なの?」
一松先生はマグカップに手を伸ばしてソファの背もたれに身を預けた。
「そうなんだよねー、マンガの登場人物はすぐに覚えられるんだけどね」
密かな悩みだ。入学して二ヶ月ぐらい経つと言うのにいまだクラスメイト全員の名前を覚えられていない。
「……俺の名前は?」
「え、結構すぐに覚えられたけど。ってかインパクト強すぎてすぐに覚えちゃうでしょ、誰でも」
「……そう?」

どうやら本人はそのインパクトに自覚がないらしい。
……まあ、自覚あったらもっと怖いけどね!
「……十四松先生は……」
「一瞬で覚えた」
そう正直に言っただけなのに、一松先生の周りの空気が一瞬で淀んだ気がした。
……怖い、怖いよ!

【番外編】関係性が入れ替わった場合→←12



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海柄  - この作品…神すぎます……凄いです!いつ見ても癒されるぅ〜!投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます!ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか?いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています! (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます! これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ!作った人…神じゃん! (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます!私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小森桃子 | 作成日時:2019年3月26日 10時

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