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「ねえねえ一松せんせー」
「なに」
なにやら難しそうな書類を、珍しく真面目に読んでいる一松先生に声をかける。
「なんか欲しいものある？」
「え、急になに……。……Aさんの苗字？」
「あげません」
あげてどうなると言うのだ。まさかわたしと結婚する気か貴様。
「……真面目に答えて」
なかなか出てこないシャー芯と奮闘しつつ、ちらりと一松先生に目を遣る。
眠たげに開かれた半目、珍しい黒縁メガネ姿、ボサボサで蛍光灯に照らされている黒髪……。
決してかっこいいと褒められる格好をしているわけでもないのに。
なんだか特別、キラキラとかっこよく見えるのは、たぶんわたしの目がおかしくなったのだろう。
……あと組まれた足！ 長くて素敵！ 好き！
少女マンガ厨としては目を逸らせないおみ足である。
「本気なんだけど……。じゃあ、Aさん」
「お願いだから物にしてくれない？」
えー……、と困った風に一松先生はメガネをクイッと押し上げる。
──無理！
悩殺されてしまいそうだ。
とにかく落ち着かなければいけない。
昨日夜更かしして一気読みしたマンガの主人公が、一松先生に似てるからといって投影しちゃダメだ！
「猫……」
絞り出したように一松先生が呟く。
「無理。高い」
「わがまま……」
「わがままはそっちでしょ！」
どうしよう。仕草までも、呼吸までも全部マンガの主人公だと錯覚してしまいそうだ。
「時計かネクタイ……」
「あ、それならいける！」
「……なんの話？」
一松先生は書類に飽きたのか机の上に放り投げ、怪訝そうな顔をしてこっちを見た。
──その顔すごく似てる！
心のなかで悶える。
「え、あ。なんでもなーい。忘れて」
「……？」
スマホでなにかを調べているふりをして、メモアプリに「時計、ネクタイ」と書き込む。
とにかく、わたしは悪くない。一松先生が、主人公に似すぎてるのが悪いのだ。
だから思わず投影するのも、普通のことであって。本能的なことであって。
「せんせー素敵……」
「……は？」
「あっ、違う、一松せんせーじゃなくてね、マンガの主人公がイケメンで……」
「……いや、別に俺って思ってませんけど。一ミリも」
ならなぜ残念そうに目を逸らす。好きだよそう言うとこ！ あ、一松先生じゃなくて主人公が。
「まあ一松せんせーも主人公には及ばないけど素敵だと思うけどなぁ」
のんびりと思ったことを呟くと、一松先生は目を白黒させる。
「本気？」
「本気本気」
「先生もAさんのこと好き……」
「『好き』なんて言ってないからね!?」
とんでもない勘違いをしているようだ。
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海柄 - この作品…神すぎます……凄いです！いつ見ても癒されるぅ〜！投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます！ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (
レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか？いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています！ (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます！ これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ！作った人…神じゃん！ (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます！私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小森桃子 | 作成日時：2019年3月26日 10時
