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スマホが着信を告げ、わたしは画面を覗き込む。
……誰だ。
登録していない電話番号は、わたしの不安を掻き立てた。
何分経っても切れない電話に対して意を決し、通話ボタンを押した。
「も、もしもし」
『あ。Aさん、保健室に忘れ物してた』
「お前かい!」
思わずスマホに向かって叫んでしまった。

『え……、なに』
「い、いや。知らない番号から掛かってきてびっくりしただけ……。ってかなんで番号知ってるの」
『俺がAさんの番号知らないと思う?』
「出来ればそう思っていたかった……」
耳元に聞こえてくる一松先生の声に、不覚にもドキドキしつつどうしたの、と冷静に振る舞う。
『保健室に忘れ物。今俺が預かってる』
「なんで今?」
『早い方がいいかと思って……?』

もうすぐで寮が施錠されるのに、どうしろと言うのだ。
「……別に今じゃなくても。寮の鍵閉まっちゃったらわたし帰れないよ?」
『遅いから俺がそっちに行く』
「えっ、やだ、部屋汚いんだけど!」
必死に抵抗するも、一松先生は別に気にしない、と返す。
あなたが気にしなくてもわたしは気にするんですけど!

『何号室?』
「……一〇四」
『四って不吉だね』
「だよね!? 一松せんせーもそう思うよねー!」
電話口の向こうから、車のエンジンが掛かる音がする。
一松先生って運転出来るんだ、なんてぼんやり考える。
じゃあ切るね、と声がして音声が消える。

数十分後。部屋のドアが二回ノックされて、わたしはドアを開けた。
「……こんばんは」
施錠時間は八時。現在、七時五十分。
「忘れ物ってなに?」
珍しく白衣を着ていない姿にドギマギしつつ聞いてみる。
「ん」

一松先生の大きな手にのせられた、愛読している少女マンガ。
「あ!」
思わず大きな声を出してしまって、恥ずかしくなり口を手で塞ぐ。
「……ありがとう。無くしたかと思って焦ってた」
「……よかった」
じゃあ、と一松先生が手を上げたあと。
施錠を告げるチャイムが鳴った。
「「……あ」」

15→←【番外編】関係性が入れ替わった場合



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海柄  - この作品…神すぎます……凄いです!いつ見ても癒されるぅ〜!投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます!ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか?いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています! (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます! これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ!作った人…神じゃん! (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます!私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小森桃子 | 作成日時:2019年3月26日 10時

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