引きこもりが愛されてしまった…【文スト】

引きこもりが１０人。 ページ16

相沢side

金属の階段特有の、鈍い音を立てながら白髪の少年が降りてくる。



地面に足が付き、こちらへ小走りで向かってきて、



「大丈夫でしたか？」



と、優しい声色で私に声をかけた。



大丈夫、それは恐らく大きな空き缶、とでも称そうか。



名称はよく知らないそれに入っている頭のネジがぶっ飛んでしまった太宰さんと一緒にいる



私に対しての言葉であることが分かる。



『あ、えと、はい』



曖昧な私の返事を聞いた彼が、慌てた様子で伝わりにくい言い方だったと謝罪する。



「ちょっとちょっと、私を置いていちゃつくなんて酷いじゃあないか。



　それより早くここから出してくれないかい？敦くん」



人に身勝手に頼んでいるのにもかかわらず礼儀を感じられない発言をする



太宰さんに呆れた目を向ける。



呆れたのは少年も同じようで、無言で空き缶(？)を蹴った。



それによって地面に転がる太宰さん。



『あっ』



「なんだいAちゃん。もしかして心配を」



『あ、いえ…ただ、それの名称思い出したので』



それ、といって先程まで太宰さんが入っていたものを指差して言う。



「え、僕、思い出せないです」



うーんと頭を悩ます少年に土管では、と伝える。



「ああ！確かに！



　そういえば、ドラム缶とも言いませんでしたっけ」



『ドラム缶…で思い出したんですけど、ドラム缶風呂って知ってます？



　名前通りドラム缶をお風呂にするやつなんですけど…』



スマホで検索し出てきた画像を少年に見せながら説明する。



なんか楽しそうですよね、そうですね、と和やかな会話が続く中太宰さんが言った。



「ドラム缶の話で盛り上がる人初めて見たよ私」

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