福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ10)

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馬鹿ページ10

「はぁーーーー。もう良い僕やらなーい。」

『えっ、如何して！？』

乱歩君は先程までノリノリで持っていた証拠の写真を放り投げると両手を上に上げそんなことを言い出す。
何故だ。お父様と逢瀬などという贅沢な提案だというのに。

「大体さぁ…馬鹿なんだよ。Aは。僕が逢瀬に行きたいのは社長じゃなくて…。」

『じゃなくて？』

乱歩君の言葉に首を傾げると乱歩君は私の手を引き、目を開く。
乱歩君の綺麗な緑の瞳が目の前に来て何となく頬が染まるのを感じる。

「＿＿＿＿＿乱歩、そこまで言うのは許可していないぞ。」

「…はぁ、ホント社長は親バカだし、Aは鈍感だし…。」

お父様は私を腕の中に収めると乱歩君を睨む。
乱歩君はそんなことを呟くと先程、ばら撒いた紙を拾い上げまぁ、良いよと又、こちらに視線を向ける。

「しょうがないから、推理したげる。…但し、Aと社長は僕をしっかり労う事！」

「…そんなことで良いのか。」

お父様はそれに少し驚いた素振りを見せるが直ぐに頷く。
…乱歩君ってばお父様に甘えたいなら素直に言えば良いのに。
まぁ、正直乱歩君より私の方が大人だし甘えさせてあげるとしよう。

乱歩君は眼鏡をかけ、超推理を始める。
たった1秒の出来事だろうか。
けれど私にはいつもこの瞬間、乱歩君の周りを何かが回っているように見えて、とても美しく感じる。

乱歩君が結論を出した。
中島達がいる場所は海。船の上だと。

「速度は東南東に20節。公海に向け進んでいる。…死んでは居ない。＿＿＿＿＿＿＿今はね。」

「輸送先は外国か。」

「拙いな…国外に出られたらもう手は出せない。」

『！お父様、港に社の船がありましたよね。』

「嗚呼、今出せば間に合う。」

父様はそれだけ言うと国木田に向け鍵を投げる。
…こうなることを見越していたのだろうか。

国木田は無言で受け取り駆け出した。