福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ8)

今日:35 hit、昨日:41 hit、合計:55,071 hit

土産ページ8

『ふわぁ…。』

小さく欠伸をしながらも朝食の準備をする。
今日は鮭の塩焼きだ。
少々味は濃いが、まぁ良いとしよう。

あっという間に準備が済み、粗茶を入れていると父様が目覚める。
まだ、少し眠たげだ。

『お早よう御座います。昨夜は…済みません。』

「いや……構わん。今日は鮭か。」

『はい…あ、そうだ。今日、探偵社へ行っても宜しいでしょうか？』

「…お前は大体何も言わずに来るだろう。」

いや、まぁ、それはそうですが。と言葉に詰まる私を横目に父様は椅子に座り粗茶を啜る。
良かった、疲れも多少は取れたようだ。

『お父様、社の皆は無花果と栗どちらが好きでしょうか。』

「両方持っていけ。私が持つ。」

『…一緒に行ってくれるのですね！有難うございます！！』

父様は早めに支度しろとだけ言うと箸を早めた。

ーーー

『お早う御座います。』

「…お早う。」

私と父が共に社へと足と踏み入れると車の空気が少しピリつくのが分かる。
少し和ませようと私は軽く笑みを浮かべる。

『颰會堂の饅頭があるんだけれど、皆どうかな？』

「！」

恐らく徹夜であろう国木田がぴくりと反応する。
机の上で箱を開くと事務員から社員まで皆が手を伸ばす。
そこで私は気付いた。

『おや、晶子さんに中島…太宰までいないようだね。』

「あぁ、与謝野さんと敦は買い出しに。太宰は…考えたくもありません。」

国木田は少し苦々しげに話す。
…お前は栗派か。

『…父様、安心してください。幾つか家に置いてあります。』

「……そうか。」

お父様はその言葉にはっと気を取り戻し、いそいそと社長室へと向かった。
…実に愛らしい。

「ねぇ、A〜他になんか無いのぉ〜？」

『ん？……嗚呼、錠菓が有るよ。』

そう言い持ってきた服をから取り出すと乱歩君は眉をあげ満面の笑みになる。
…口を開けているのは入れろと言うことか。

『はい、あーん。』

「あー……、んまい！」

乱歩君は子栗鼠の様に口を膨らますともきゅもきゅと音を立てて咀嚼する。
ナオミ達が真似しているのは見なかったことにしよう。

「わぁー、美味しそうですね！それをしたらもっと美味しくなるんですか？」

『え゛…うーん如何だろう……。』

純真な賢治くんの瞳から思わず逃げてしまったのは仕方がないこと…だと思いたい。
後でこっそり国木田にお薦めの菓子を聞かれたのは二人だけの秘密だ。