福沢諭吉の娘ですが。【文スト】 (ページ38)

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菓子ページ38

ある昼下がり、喫茶うずまきには探偵社員が集まっていた。見掛けこそだらけている様に見えるが此れでもうずまきを救った直後なのだ。うずまきを襲った犯罪組織を捕まえた翌日。少しくらいだらけても文句は言われないだろう。そうふんぞりかえる彼らの元に少女は来た。

『あ、ねぇ鏡花ちゃん知らない？』

「嗚呼、鏡花ちゃんなら任務中じゃ無かったかな。」

『あ〜、じゃあ敦。これ渡しといてくれない？』

そう言い渡されたのは所謂アイシングクッキーという奴で。しかもそれに可愛らしく兎が描かれているのだ。綺麗にラッピングされたそれに敦は簡単の息を漏らすと凄いね、とAに云う。Aはそれに笑みを溢すと上手く出来たんだけど作り過ぎちゃって…そう言った彼女の鞄には大量のクッキィがラッピングされていた。

太宰は綺麗だねぇ、と一つそれを取りかざす様に見る。Aは谷崎達に一つずつ配り一番大きな袋は乱歩にあげた。乱歩はわーい、とまるでプレゼントを開ける子供のようにニコニコとクッキィを食べた。

「はい、Aちゃん。」

『ん…あー……ん！おいひい！』

そのやり取りに敦は赤面をしつつも乱歩を横目で見る。こういうのはこの人の特権だと思っていたけれど…、谷崎は敦の腕を引くと小声で囁いた。

「敦君は知らないだろうけど、太宰さんもAちゃんと仲が良くてね。」

乱歩さんとの方が目立ってるけど太宰さんともこうなんだよ、Aちゃん。その言葉に敦はなるほど、と頷く。正直、探偵社の恋愛事情は色々あり過ぎて目が回る。もうこれも兄弟愛とかそういうものだ。そう無理矢理、納得させると敦はクッキィを摘んだ。……あ、おいしい。

＊＊＊

『…乱歩君。』

「なに」

『重い。』

知らない、そう言いもたれ掛かられた背はとても重くて自分よりも背の高い彼は流石に重かった。機嫌が悪いのだろうか。お菓子もあんなに食べたのに、と不思議に思うがまぁ良いや、と乱歩君の前に富林をちらつかせる。

『あーあ、折角、乱歩君の為に作ったのになァ、乱歩君が食べないなら太宰にでも…、』

「…べる。」

『ん？なんて、』

「…食べる。」

乱歩君は起き上がり富林を奪うと食べ始めた。それが少し可愛らしくてくすくす、と笑うと乱歩君は笑うな！と怒る。それにはーい、と返事をすると伸ばすの禁止！とまた怒る。

「……、」

太宰は其れを只々見つめ続けた。