蕨姫花魁のお気に入りの遊女は……

上弦の鬼 ページ15

善逸視点


善逸「…一大事だ。女の子が泣いている…！」


それはAちゃんから蕨姫花魁の事を聞いた翌日の事だった。


俺が泣き声の聞こえる方へ行くと、そこには壺やらが転がっている部屋で、一人の女の子が泣いていた。


善逸「ど、どうしたの！？この部屋！めちゃくちゃなんだけど！！」


思わず叫んだ俺を振り返った女の子。


その顔には痛々しい痣があった。


善逸「ええっ！？喧嘩！？喧嘩した！？」


「グスッ……グスッ」


女の子は嗚咽を漏らしながら、また泣き出してしまう。


それを見て、俺は大慌てで部屋に入り、女の子を慰める。


その時だった。


？「アンタ、人の部屋で何してんの？」


苛立ちの籠った女性の声。


手が震えた。


自分の意思と反して、恐怖で体が震えて冷や汗が頬を伝う。


鬼だ。今、後ろにいるのは鬼だ。


人間の音じゃない。


音が静かすぎて、逆に怖い。


これ……上弦の鬼じゃないの?









？「おい。耳が聞こえないのかい？」


再度、耳に入る女性の声。


「わ、蕨姫花魁」


「その人は、昨日か一昨日に入ったばかりだから…」


廊下と部屋の境にある襖のそばにいる二人の女の子の言葉に俺はまた衝撃を受けた。


蕨姫花魁……？


それって、その人って、Aちゃんの慕う人じゃないか?


まさか、まさか、Aちゃんの慕う人がこの…鬼？


嘘…でしょ？

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