蕨姫花魁のお気に入りの遊女は……

優しい人 ページ14

善逸視点


善逸「あ、あのAちゃん……？」


A「………」


善逸「………」


駄目だ。Aちゃん、何も話してくれない。


俺は荒々しい性格と噂の蕨姫花魁という人について知りたかった。


だから、彼女の元禿であるAちゃんに話を聞こうと思った。


Aちゃんは蕨姫花魁のお気に入りだと、美与ちゃんにも聞いたから。


だけど、どれだけ話しかけても何も返事が返ってこない。


カナヲちゃんは銅貨を投げてくれてたけど、彼女は遊女だし銅貨を持っていないのかも。


A「………」


善逸「……えっと、蕨姫花魁ってどんな人？」


すると、Aちゃんは俺の目を見つめた。


A「………」


相変わらずの仏頂面で無言。


……この子、何考えてるんだろう？


どういう感情の顔なの？これ。


そもそも感情があるのかな？
感情の音がしないし。


A「…優しい人」


その時、唐突に彼女は口を開いた。


善逸「…優しい人？」


A「蕨姫花魁は誤解されやすいけどね、誰よりも私を見てくれる人」


そう言ったAちゃんは僅かに口角を上げていた。


そして、仄かに優しい音がした。


この表情…。この音…。


それは誰か大切な人を想っている時のもの。


善逸「Aちゃんにとって蕨姫花魁は誰よりも大切な人なんだね」


俺はAちゃんに笑いかける。


俺は安心した。


感情の音が全くと言っていいほど聞こえなかったAちゃんにも大切な人がいると知って。


A「……うん」


Aちゃんはカナヲちゃんとよく似た声をしていた。

上弦の鬼→←カナヲちゃん？

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