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ダチュラは待つことが出来ない。喧嘩っ早いし、挑発されればすぐバトルに乗ってしまう、悪口を囁かれれば握った拳を振り下ろさずにはいられない。堪え性の無いどうしようもない人間だ、とダチュラは理解している。自分が忌み嫌う兄も頭に血が上りやすくて喧嘩早い人だった。そんな兄と同じにはなりたくないと家を出たのに、ダチュラは何も変わっていない。しかしそんな耐え症の無いダチュラを、サキハシは叱ることこそすれど見捨てることもなければ見切りをつけることもない。彼は本当に忍耐強い人だ。サキハシは、ダチュラのことを『伸び代がある奴』と言ってくれた。“待てる”人である彼は、自分が教育しながらダチュラが成長してくれるのを“待って”くれているのだろう。

「昼飯何食いてぇ?」

「……カレー?」

「疑問形かよ」

「だって、この地方あんま飯美味くないじゃん。ハズレが無い安定択はカレーぐらいじゃね?」

「そう言うなよ。昔に比べたらだいぶマシになったんだぜ?」

「ニシンが突き刺さったパイを食べてる奴等の食事が今より酷いの? ヤベェじゃん、それ」

 ダチュラが嫌そうに顔を顰めれば、サキハシは軽快に笑った。二人はこの地方に来てから何回も訪れているカレー屋に目的地を定めてそちらへと歩き出す。

「骨董品店のオッサン、まだ売ってくれないって?」

「あぁ。『コレは人に売るつもりは無い。本来の持ち主に返すために飾ってあるんだ』ってさ」

「本来の持ち主って誰だよ」

「それは俺が知りてぇよ」

 サキハシはまた笑って、到着したカレー屋のテラス席へと上がる階段を登った。ダチュラも一段飛ばしでそれを追いかけて、サキハシが座ったのと同じ円卓テーブルに腰かける。

 往来に面したこのテラス席に着席してすぐ、店員がオーダーを取りに来た。ダチュラがこの店で食べるメニューはいつも同じものなので、サキハシが自分の分と纏めて注文をする。オーダーを書き留め店の中に引っ込んだ店員を見送ってから何気無しに往来に目をやれば、目を引く亜麻色髪の少女を見つける。「あっ……」と思わず声が溢れた。

❦→←三話:七色の瞳を持った少女の名は



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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時

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