【ポケモン】命儚し愛せよ乙女IV〜いずれにしても彼女は駑馬〜 (ページ8)

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三話：七色の瞳を持った少女の名はページ8

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　入店ベルの音がして、ダチュラは顔を上げた。——“入店ベル”といっても、今音が鳴ったのはただドアを動かしたからであって入店を知らせるためでは無い、むしろこれは退店ベルである。——兎も角、涼やかなベルの音と共に押し開かれた扉から出てきた男は、どこか疲れたような心做しか残念そうな面持ちでため息をついた。

　ガラル地方ナックルシティの商業街にひっそりと建てられた骨董品店の、レジカウンター奥のガラス棚にあるモンスターボールを模した機械。その機械を購入し飛空艇に持ち帰ることが、ダチュラ達が今着任している任務である。その交渉役として店に入った先輩を、ダチュラは店の外で待っていたのである。

「サキくん、どうだった？」

「いやぁ、今日もダメだわ。困ったな」

　ダチュラが『サキくん』と呼んだ男、サキハシはやれやれと言いたげに肩を竦めて、「飯食って帰るか」と滞在しているホテルに向かって歩き出す。ダチュラはそれを追いかけた。

　ダチュラは背が高い。192cmという長身であるため、170cm代の背丈のサキハシは自然と見下ろす形になる。しかしサキハシはダチュラより四歳も歳上であり、また個人的に彼のことを兄貴分として慕っているため、ダチュラは親鳥を追いかける雛鳥のように彼を追いかけて歩くのが常だった。四歳差、あまり大きな年齢差には思えないかもしれない。しかしダチュラはまだ10代でサキハシは20代。この壁は厚かった。

　紺碧色の髪を揺らしながら、目の前の桜色の髪の男を見つめる。『困った』と言いながら、サキハシに焦った様子はなかった。彼は“待てる”人である。この交渉に一年時間がかかったとしても、サキハシは焦らず仕事を完遂するだろう。そういう所を、ダチュラは尊敬している。