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(……アイビー、もう電車が来る。だから手短に話す。お前が何者であったとしても、どんな出生だったとしても、これからどんな人生を歩むとしても、俺達の関係は変わらないし俺はお前を否定しない。お前が自分の人生を憂うのは勝手だ。自分が可哀想と嘆くのも勝手だ。だが俺がお前を愛しているのを否定するのはやめろ。俺はお前を愛している。この想いは神にだって覆せない)
「……うん。ありがとう、メタモン」
アイビーはメタモンとキスをした。そしてプラットホームに流れ込んでくる電車の光に辺りが明るくなると同時に、メタモンは[へんしん]を解きボールに戻る。ホームに一人残されたアイビーは、キャリーケースを転がしながら電車の中に入った。特急列車のコンパートメント席の中、出入口から一番近い席の右端に座る。背の低いアイビーでは上の荷物置きにキャリーケースを乗せるなんて不可能なので、キャリーケースは壁際に寄せて置いておくことにした。
やがて発車した列車の車窓を眺めながら、アイビーはこれからの事を考える。しかし酒で思考力が鈍ったアイビーは、何も答えを出すことは出来ない。だからその酔いに身を任せて眠ることにした。この電車に自分以外にどんな人間が乗っているのか、その事を現時点のアイビーが知り得ることはついぞなかった。
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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時