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「でもキミがいればいいの。きっと昔からそうだよ」

(……)

 ジッと、メタモンの瞳がアイビーを見た。アイビーはそれを見つめ返し、フッと笑う。彼からキャリーケースを受け取り、時計を見る。電車が発車するまであと4分。まだホームに電車は来ない。電車の発車時間が遅れるぐらいよくある事だ。むしろカントー地方の電車の時間が時間を守り過ぎるのである。そのせいでちょっと電車が遅れるだけで駅員がずっと頭を下げて謝ることになる、その駅員は電車の遅延の理由に微塵も関係してないというのに。

 アイビーはスマートフォンをポケットから取り出して見る。昼間にキバナから見せられた記事をインターネットで探した。すぐに出てきた。

 事件の記事では、やはりアイビーが死亡したことになっている。しかしあの日学校にアルカディアーク団の人間が侵入していたことを言及している記事は無い。新聞関係者にもアルカディアーク団の諜報員がいて情報を制限しているのか、それとも目撃者が居ないのか、目撃者が名乗り出ないのか。分からないが、あの学校には戻れそうにないことを理解する。ロイバが来る記者全員に頼んだからだろうか、アイビーの顔写真が掲載されている記事は見つからなかった。その事に、取り敢えず安心する。

「——普通の子供はさ、“学校に行きそのあとに就職します”っていう正攻法(テンプレート)の人生を歩むのに、ボクはまるで違うよね。全部が一種異様(イレギュラー)だ。なんでだろうね、ボクも他の子供(ニンゲン)と同じ身体をしていて、同じ言語を喋って、同じ食事を食べるのに。女の子宮から生まれたか、試験管から生まれたかの違いかな?」

 電車の到着時刻まであと2分になった。メタモンは一度目を閉じると、またアイビーを見る。そして両手でアイビーの頬を包むようにして、額を突き合わせる。

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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時

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