【ポケモン】命儚し愛せよ乙女IV〜いずれにしても彼女は駑馬〜 (ページ37)

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「どうした？顔色悪いぞ」

「あぁ、キバナ……靴、それ？」

「ああ。履かせてやるよ、こっち来い」

　キバナが手招きすれば、アイビーはそれに従ってリビングのソファーに座った。キバナはアイビーの前に跪くと靴を脱がして、箱から靴を取り出す。

　黒い皮の靴だった。おそらくはパルデアの姿のケンタロスの皮を鞣して造った革靴。踵は5cm程のウェッジヒールになっていて、程よい高さと安定性がある。

　スニーカータイプの革靴は、アイビーの足にピッタリと嵌った。流石だと靴屋の店主の優秀さを心の中で讃えながら、キバナはアイビーの顔を見上げる。

　アイビーは、今にも泣きそうな顔をしていた。靴が履けた足をプラプラと揺らし、自分の足がそこにあることを確認するように撫でてから、「ありがとう」と感謝を述べる。

「すっごく嬉しい。履き心地も良い。最高だ」

　彼女は靴を讃えたが、その顔は履き心地を喜んでいる様ではない。先程の電話が、そうさせたのだろうか。キバナがアイビーの頬に触れると、アイビーはその手をギュッと握った。

「アイビー……」

「この礼はきっとするよ、キバナ。絶対に、必ず」

「……もう行くのか」

「うん……」

　アイビーはソファーから立ち上がると、新しい靴でフローリングを踏みしめながら掃き出し窓の方へと歩いて行った。彼女が窓を開けると、夜風が部屋に入り込み、ふわりとアイビーの髪を揺らす。亜麻色の髪をはためかせながら彼女はベランダへと歩みを進め、キバナはそれを追い掛けた。