【ポケモン】命儚し愛せよ乙女IV〜いずれにしても彼女は駑馬〜 (ページ36)

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「部屋に女を連れ込んでるの、記者にバレないといいね」

「オマエはすぐそういうことを言う……」

「だってそうでしょう？アナタのファンって過激。アンチも過激。メディアも過激。アナタって人気者」

「さてはオマエ酔ってるな？」

「フフッ、そうかも？気分としては気絶するまでお酒を飲みたい」

「飲むか？」

「やめておくよ。でも全部片付いたら、その時は朝まで付き合ってね」

　アイビーは悪戯っぽく笑って、煙草を持つ手とは反対の腕をキバナの首に絡みつけ、首筋にキスをした。柔らかい唇の感触が肌に伝わって、驚き目を見開くキバナをアイビーはクスクスと笑う。

「……するならこっちにしろよ」

「駄目だよ、そっちは。浮気になっちゃうから」

　アイビーの顎を掴み唇にキスを返そうとすれば、アイビーはまた肩を揺らして笑いそれを拒んだ。狡い女だ。この世に宿命の女(ファム・ファタール)というものが本当に存在しているのなら、きっとこの女こそキバナにとってのファム・ファタールである。男を破滅させるために、まるで運命が送り届けたかのような魅力を備えた女。キバナにとってアイビーがそうだ。彼女の魅力に引き寄せられ、キバナはもう目を逸らせない。ゆっくり、じっくり、距離を詰めて、そしていつか。

　その時、玄関のチャイムが鳴った。きっとコンシェルジュが靴が届いたことをキバナに教えるために鳴らしたのだろう。キバナはグラスを置き、配達された靴を受け取るために一度部屋を出る。思った通り呼び鈴を鳴らしたのはコンシェルジュだった。見知った顔の男から、これまた見慣れた靴屋の箱を受け取って、受取書にサインをして部屋に戻る。オートロックの玄関が閉まったのを確認してからリビングに戻れば、アイビーはキッチンで誰かと電話をしていた様子だった。煙草はもう携帯灰皿に捨てたらしく、その手にはスマートフォンだけがある。そして、先程までアルコールで赤らんでいた顔が青ざめている。