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人目につかない裏路地の室外機に座り煙草に火をつけていたアイビーは、その路地に姿を表したキバナを見てニヘラと愛想笑いをした。だがすぐにつまらなさそうに目を伏せて、煙草の煙を吸い込む。
『良いバトルだった』
『どうも、ありがとう。キミにそう言ってもらえて光栄だよ』
『ダンデがオマエに推薦状を書きたがった理由が、よく分かったよ』
『そう。それで?』
『オレと……——』
『——『バトルをしてくれ』なんて言わないよね? まさか。言わないでおくれよ? 聞きたくもない。ボクは、そういうことを言われると、嫌な気持ちになる』
『……なら、オレとも“友達”にならないか?』
『フフッ、変な人。いいよ? 友達になっても。強い人は、好きだから』
それから今まで、キバナとアイビーの不思議な友情は続いている。
アイビーは、ダイヤの原石のような娘だ。発掘して研磨すれば何物にも負けぬ輝きを見せる。その輝きを見せつけたいと思うのがダンデやキバナで、輝きたいとすら思わないのがアイビーだ。本人がそんな心境であるから、キバナの望んだ通りになる可能性はあまりにも低い。それでも、期待してしまう。期待せずにはいられない魅力が、アイビーにはある。
アイビーは変わらず、ソファーで酒を飲んでいた。彼女はアルコールに特別強いわけではないが、酒を飲むのは好きな
その途中、少しだけ苦しそうに、爪先で喉を掻く。その動きを見て、そういえば今日は会ってから一度もアイビーが煙草を吸っていないことに気付く。アイビーは煙草に依存している、そんな彼女が禁煙をしたとは思えない。ただ、キバナに配慮して——正確に言うなら、キバナの手持ちであるドラゴンタイプのポケモン達に配慮して——吸わないようにしているのだろう。
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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時