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『ならこうしようよ。キミ達五人……さっきボクと戦ったお兄さんにはもうポケモンは居ないだろうから、残りの四人。四人全員、自分の仲間の中で一番強いと思ってるポケモンでボクとバトルをしようよ。一斉に。四対一、キミ達が圧倒的に有利だ。そうだろう? ボクが選出するのは、さっき使ったゾロアークだけ。一回バトルをして、体力を消耗してる。もしキミ達が勝ったなら、ボクはキミ達全員に賞金を支払うよ。一人につき五万、計二十五万。でもボクが買ったなら、全員ボクに一万ずつ支払ってくれ。それでどうだい? どっちが勝っても、一人に与えられる金額はキッチリ五万だ。違うのはボクは一人で、キミ達は四人だってこと。ローリスクハイリターンだと、思わない?』

 アイビーの申し出に、青年達はすぐに乗っかった。四対一で負けるわけがないと思っているのだ。楽に五万も手に入る、乗らないわけがなかった。

 そして始まったバトルで、キバナはあの日ダンデが興奮していた理由をよく理解した。

 目の前で火花が散るように、彼女は苛烈なバトルを繰り広げた。孤高の狼が群れの羊を狩るように、彼女はたった一人と一匹のポケモンで青年達四人と四匹のポケモンを蹴散らしたのだ。彼女は“強者”だった。ダンデが将来を見込むのも理解出来る程の“強者”。キバナの心臓は激しく脈打っていた。他人の試合を見てこんなにも興奮したのは久しぶりだった。

 試合をしている間見開かれていたアイビーの青色の瞳は、技と技のぶつかり合いで起こった強風で帽子が吹き飛ばされたことで光が入り金色に変わり、細められて緑色に色を変える。

『ほら、ボクの勝ち。約束は、守ってね?』

 大勢のギャラリーがいる中で行われたバトルであるから、もう難癖をつけて賞金の支払いから逃れることは出来なくなった。彼等は聞くに耐えない罵詈雑言をアイビーに投げ捨てて、財布から一万円札を地面に叩きつけるとそのまま逃げるようにその場を去った。アイビーはやれやれと言いたげに肩を竦め、そしてクスクスと笑う。その横顔に、見惚れた。多分、この時に恋をした。強者(ダンデ)に抱いた感情とはちょっと違う、この感情に名前をつけるのならば限りなく“恋”。地面に落ちた紙幣を拾い集めた子供に、アイビーは優しく微笑んで『それあげるわ。おやつでも買って』と言い、ゾロアークをしまってその場から去った。キバナは後を追いかけて、彼女と再会を果たす。

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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時

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