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キバナが連れて行ってくれたコスメショップは、アイビーの心を非常に満足させた。圧倒的な強さと整った容姿から固定ファンが多くメディア露出も多いキバナが愛用している化粧品を売っている場所だからそれなりに良いものがあるだろうとは予測していたが、ここまでとは思わず驚いた。紹介制で会員しか入れないというそのコスメショップの中で、アイビーはアイシャドウを購入した。造形は骨董品店の化粧品には及ばなかったが、それより発色が良く美しく肌に映える水色のアイシャドウを見つけることが出来たのである。購入を終えてから、二人は次に服屋に向かった。もう四月であるから、ブティックには夏物の衣服のコーナーが生まれ始めている。これから寒い場所に行くとこになるアイビーにとってはあまり喜ばしくない。まだ残っている冬物のコーナーへと向かい、可愛いダッフルコートとセーター、手袋とタイツを三枚購入した。
「これから夏だってのに、随分厚手の服を買うんだな」
「ボクは寒さに弱いからねぇ」
「ふーん」
キバナは買い物に連れ添いながら、そんなアイビーを見ていた。シャンプーなどの消耗雑貨を購入し終えてから、それら全てを匿名サービスを使ってホテルに運ぶように手配する。これで、自分がホテルに戻る頃にはフロントスタッフが荷物を受け取って置いておいてくれるはずだ。
服を買いコスメを買い雑貨を買い、次に靴が欲しいとアイビーは言った。それを聴き、キバナは彼が贔屓にしている靴屋へと連れて行くと先導した。実家が太く幼い頃から経済的になんの縛りもなかったキバナが贔屓にしているというから、先のコスメショップ同様てっきり大きな商業ビルの中にあるような靴屋かと思ったが、連れて行かれたのは商業街の一角にポツリと立った古めかしい靴屋である。看板や煉瓦造りの壁には蔦が生えていて、あまり外装を手入れしている様子は無い。
「ここが、キミの贔屓の店なの？」
「ああ。昔から特別な靴はここで仕立ててもらってる。一足プレゼントしてやるよ」
店内に入ればすぐに、革独特の匂いが鼻腔をついた。出入口から入れる空間と店の内部空間を分けるカウンターには誰も居らず、店の奥から刃を研ぐ音が木霊していた。
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作者名：綿雲しぃぷ | 作成日時：2023年6月27日 19時
