❦ ページ12
「助けに行くか？ 心配なんだろ？ あの子のこと」
ダチュラが運ばれた料理にも手をつけずずっと彼女を見ているから、察したサキハシがそう問い掛けた。ダチュラはその問いに悩む。そもそもどうして、自分がこんなに彼女のことが気になっているのかが分からなかった。名前もさっき知った、顔も初めて見た、ただその瞳の色が気になった、それだけのことなのに。
ダチュラが考えている間に、少女は道の端から歩いてきたニット帽を被りサングラスを掛けた男に話し掛けられた。どうやらその男とは知り合いだったらしく、彼女はナンパ男達に軽く手を振ってから男と共に歩き出す。そして雑踏に彼女が消えてから、ダチュラはもう往来を見るのをやめてカレーに向き直った。
「なんでオレ、あの子のこと気になったんだろう」
「それは俺も分からねぇけど……お前の好みのタイプだっんじゃねぇの？」
「揶揄わないでよサキくん」
「悪ぃ悪ぃ」
ムッとして言い返せば、先にカレーを食べ始めていたサキハシは爽やかに笑う。
「でもそうだろ？ お前って基本人見知りだし、他人に——特に女に興味持つことなんて無いじゃん。だから、好みのタイプだった可能性かなって」
「でもオレ、あの子と話したことないし……本当に、瞳が気になっただけなんだよ……」
「瞳ねぇ……そういや、リジアの捜してる女も綺麗な目をしてるって言ってたな」
ふと、思い出したようにサキハシが言った。ダチュラはああと頷きながら、その時のことを思い出す。
ダチュラ達が活動拠点としている飛空艇の中、専ら会議室として使われている部屋で船内の仲間を集めた彼は、自分で書いたらしい似顔絵を持ってきてホワイトボードに貼り付けた。
『オレは今、コイツを捜してるんだ！』
そう言って見せられた似顔絵は、生憎人間とは思えない容貌をしていた。黄土色系の髪色をしていて、肌が白いことはわかる。ワンピースらしいものを着ているのもわかる。だが顔の造形という点では何一つわからない。幼児の落書きということしかわからない。バトルにおいて天才的とも言えるセンスを持っている我等がリーダーは、しかし画力という点では幼児並みということを知り、似顔絵を見せられたアゲラタは『これでどうやって捜すんだよ……』と頭を抱え、カミルは『こいつ本当に人間か？』と首を傾げていた。
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作者名：綿雲しぃぷ | 作成日時：2023年6月27日 19時
