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及川がAのことを褒めたあと、二人の間で会話はなかった。Aはどう話せばいいのかわからないし、及川もこんなに恥ずかしがるとは思っていなかったのだ。
気まずい無言が続く。一言も話せず、いつの間にか、もとの公園についてしまった。
「っ、華奈、どうした？」
A、といいかけた百合がAに聞くも、彼女は『なんでもないよ』と答える。顔の赤みは引いていたが、何か誤魔化すように『そろそろ帰らないとね』と言った。
「お前ら、家の方向どっちだ？途中まででも送ってく」
そう言うのは岩泉だ。どこまでいっても男前である。
「私の家がここからだと一番近いですかね。一番遠いのは…」
『私。でも伊織の家にいろいろ置きっぱなしだから取りに行かないと』
「あぁ、そうじゃん」
「じゃあとりあえず、笹羽の家まで送るわ」
「岩泉さん男前ー！」
岩泉にちゃちゃを花巻がいれるも、彼は見事にスルーする。こっちです、と伊織が案内して彼女の家に向かった。
━◈━◈━◈━◈━◈━
荷物を持って伊織の家を出ると、たくさんの荷物を見て岩泉が「それ持つから寄越せ」と、半分強引にも持ってしまった。紳士だ。伊織に見送られながら、それぞれの家まで送る青城の3年生。Aは及川と一緒にいるのが気まずくなり、岩泉と話していた。途中で百合と夏実と別れ、今は岩泉と2人だ。岩泉が言う。
「すまねぇな。付き合わせちまってよ。及川になんか言われなかったか？」
『大丈夫ですよ』
柔らかく笑ってAは言う。手慣れた及川よりも、どこか不器用な岩泉の方がそばにいて心地よかった。
「そうか。何かあったらすぐに言え。あいつはすぐに迷惑をかける」
彼は頼もしげに言う。うっとうしそうに言う中にも、どこか及川に対する信頼を感じた。
『ありがとうございます、助かります』
Aは感謝を述べるも、まっすぐな優しさを持つ彼に嘘をつくのがなんだか申し訳なく感じた。
「何かあったら大変だかんな…。連絡先、交換しとくか。えっと…。」
『Aです』
思わず、そう言っていた。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2024年2月7日 17時
