空白の1コマ ページ34
「…それで、その後は?」
完全に月に行けていたら、あいつと出会えてよかっただろうに。そんな事を思ってしまう。
俺だって今、月に行ってあいつに会いたいと願うばかりだ。
「代わりに、頭だけを残して月に行ったラピスの頭を付けて…それで今は眠っている途中。」
ダイヤが顔を俯ける。
インクルージョンが住んでいるであろう別の宝石の頭部を接着とは、中々リスキーな事だ。
青緑は目覚める事が出来るのか、それとも二度と目覚めないのか。
目覚めなかったら、あいつが帰ってきた時に悲しんでしまうだろう。
それを想像すると、無意識に眉が歪んだため考えるのをやめた。
「まぁ…ゆっくり待つしかないな。ダイヤ、今日の仕事は?」
話を変えるため、仕事の事を話に出す。
「今日はお休み貰ってるわよ、自由に過ごしてて。」
いつも通りの優しい笑みをダイヤは浮かべる。
こんな事を言うのもあれだが、ダイヤのこの優しい笑みは見ていて落ち着く。
もちろん、本人の前でも誰の前でも口にする気は更々無い。
「そうか。じゃあ俺は太陽光でも浴びてくる、んじゃまた。」
「ええ、いってらっしゃい。」
____
諸の丘の海辺に座りながら、キラキラと光を反射して輝く海を見つめる。
クリソコラも、あんな色で、あんな輝きを放ちながら皆と会話をして月人を倒して。
生活していたのだろう。
「なんで、俺は生まれたんだろうな。」
そこら中に散らばるなり損なった宝石達に、語りかける。
もちろん返事が返ってくることは無くても。
「…俺もなり損なったお前らと同じような物だろうな、きっと。」
生きている意味を見つける事が出来ない、やっときちんと動く事も喋る事も出来る身体を手に入れたって生きる意味だけがぽっかり空いていた。
あいつと、話す事だけが唯一の楽しみだったんだ。
それでもあいつはもう居なくなっていて。
「何も考えられずに居られるお前らが羨ましいな。」
自嘲的な笑みを浮かべる。
「…俺も、ここで眠らせてもらうよ。」
全てを見透かしているかのように、光を放つ太陽の下。
まさに宝石を粉にしたかのように輝いている砂辺の上に寝転がっては意思も無く希望もない、たくさんの宝石達と共に眠りにつく。
そこに悪夢が待っていたとしても。
今は、目を閉じたかったのだ。
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作者名:兀 | 作成日時:2018年6月3日 20時