月へ ページ42
あの日、カンゴームと会話をして数日後。
目が覚めたばかりの陽の光に照らされながら、フォスの部屋を訪れる。
「お？ アマゾナイトンどしたの？」
朝礼が終わり、部屋に戻って髪を整えていたフォスがこちらに気付き言う。
「次の戦闘で月に行くんだろ。」
驚いたように目が見開かれる。
だがそれは一瞬の事で、フォスはすぐに笑みを貼り付けた。
「盗み聞きでもしてたの〜？ えっちぃ。」
「…言っとけ。んで、本当なのか。」
フォスは困ったように眉を歪める。
相変わらず、口は笑っているが。
「本当だよ。」
「連れて行け。」
「それは無理だなぁ。」
「連れて行け。」
必ず月へ行き、クリソコラと会ってみせる。
例え、苦が待っていても。
そこで、知ってはいけない真実が息を潜めて俺を捕食しようとしていても。
引く気は、一切無い。
「戻ってこれる保証は、1あるかどうかだ。」
「そうか。」
「うぐぅ、こまるー！」
フォスが上げた叫びが、小さな部屋に響く。
「っあー！ もうわかったよ！ カンゴームと作戦会議ね、カンゴーム呼んでくるから！」
「…ありがとう、フォス。」
「はいはい、僕の事を恨んだりはしないでね。」
もちろんと返し、
部屋を出る直前のフォスの背中をチラリと見た。
＿＿
ーー月人が放った弓が、頬を掠める。
丁度目の前に飛んできた弓は、ハサミで弾き返した後、月人の目の前へ飛躍した。
ここからが、作戦だ。
思い切り、力を込めて。左手に持ったハサミを振り、左側に居るフォスの腹にぶつける。
フォスの身体にヒビが入る音が、微かに耳に入った。
「んな？！ アマゾナイト！」
「避けなかったお前が悪い。とっとと月人を倒……おい！」
言葉を並べている途中に、フォスに右袖の裾を掴まれ、一際大きな月人が持つ皿の上へ投げつけられた。
ここから意識を失わない程度に、両方が両方に傷を負わせなければいけない。
所謂、相打ちをしなければ。
タイミングは俺の上に跨るフォスがウィンクをしたら。そうしたら俺はフォスの腹をハサミで貫く。
「フォス！ くそ…っ！」
言い終えると、フォスの右目が閉じられる。
同時に、剣が振りかざされた。
俺もハサミを持ち、フォスの腹へ狙いを定めたあとにハサミで貫いた。
そして、フォスも剣で俺の腹を貫く。
「…っ…、は…。」
悲痛に染まった息を吐き、瞼を閉じる。
意識を失ったフリをしているであろうフォスが、俺の上に倒れ込む音がした。
寒い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
