シンジュクNo.2ホスト系女子。【伊弉冉一二三】

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彼女が奥のフロアに行ってから、やけに時間の流れが遅く感じた。


それにしても、全く戻ってくる気配のないことを不審に思った。



早足で半階層下り、彼女が向かった奥のフロアへと進む。


「......？」


バイキングエリアにたどり着くも、彼女の姿はない。

それどころか人もポツリポツリとしかおらず、フロアは静かな空気に包まれていた。


「ーーー！」


「！」


突然、隣の貸切状態になっているパーティールームからドッと歓声が聞こえた。

音はこもっているが、それでも外まで漏れるほどの大きな拍手と歓声に驚き、思わずそちらの扉を見る。



まさか。



嫌な予感に、少し冷や汗をかきながら勢いよく扉を押した。



「うわっ」

扉のすぐ前に立っていた、従業員と思わしき人が驚いたように声をあげる。

部屋の中は思ったよりも広く、更に奥で人だかりができているのが目に入った。


そして


「よっしゃ、もう一杯飲んで更に一曲いってもらおうぜ！」


『んぇ？また俺かよ、もういいにしろってぇ......』



カラオケ用ステージの上。



見知らぬ男に肩を組まれたAちゃんが、そこにいた。




「Coyの生歌すげぇ」


「もっと飲ませちゃえ！」


『はは、ほんとにやんちゃなプリンセスだなぁ......』


頬を桃色に染め、今にもふらふらと倒れそうな彼女。

業務中はもちろん、アフターでも
あんなにひどく酔っているAちゃんは、この数年間で一度も見たことがなかった。


一体何を、どれだけ飲まさせられたのだろうか。


知らない男が、彼女の腕を荒く掴んで支える。



やめろ。そんな風にAちゃんを扱うな。

俺の、大切な女の子に。



心の奥底に、沸々と何かが募るのを感じた。




「こいちゃん！」


壇上に向かって叫びながら、人混みをかき分ける。


「え！？ちょっ、GIGOLO！？」

「やだうそー！こいくんと一二三、一緒に来てたんだ！」

「ていうことは、正式に二人のデュエット曲聴けるんじゃね？」


ひとりでに盛り上がる場には一切目もくれず、ただひたすらに足を進める。


やっとの思いで壇上の前に立つと、彼女は不思議そうに首をかしげた。



『......あぇ、ひふみ？』





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