過呼吸多発症【探偵チームKZ】

１０『優しさが首を』 ページ10

「清水、どうして宮野を叩いたんだ？」


教師はいつも言う。
怒らないから。話してくれ。大丈夫、先生がなんとかする。

そんな二酸化炭素を出すだけの行為、嘘を、まるで日常の如く吐き出すんだ。

「……合唱部で、ちょっと」

「そうか……、何かあったら相談してくれ。力になるから」


嘘つけ。

お前ら教師はどうせ、いつだって、事が起こった後に動き出す。
そして、もう一回言うんだ。

『なんで相談してくれなかったんだ』


何度だってしたじゃん！！！


部活を辞めさせてください。もう無理です。先輩と上手くいきません。退部させてください。

『大丈夫だ。きっと、清水なら」

『もう少し頑張ってみないか？』


「先生だって、人間だもんね……」


私が、先生の救済リストに載ってないだけだ。
人間だから、先生だって選り好みする。
私は可愛げのない、教え甲斐のない生徒だ。


「失礼します」


それでも、扉を閉めた音は妙に虚しく感じた。


「清水さんと知り合いって本当？」

「……え？」

翼が急にそんな事を聞いてきた。
Aちゃんについて話した事は無いと思う。ってことは、誰かから聞いて、気になったていう事。

「どうして、Aちゃんの事聞くの？」

「噂になってたんだ。清水さんがクラスメイトに暴力を振るったって」

ありえない。

暴力を振るう様な子じゃない。付き合いは短いけど、それはちゃんと分かる。
だって、あんなに優しくて、少し上がり症で、はにかんだ笑顔が似合う子が、そんな事。

考えて、私はハッとした。

「合唱部が、関係してるのかな……」

「合唱部？」


ーーーー

「彩ちゃんは優しいね」

彼女は言った。
髪の毛が風で揺れ、彼女の顔にかかる。

「私ね、優しくされるのが嫌いだったの。まるで、誰かに頼らないと生きていけないって、言われてるみたいで」

そんな事ないのにね、私は何も言えなかった。

「でも、もうそんな事ないんだけどね。たまに思っちゃう。もしかして、この人が私に優しくするのは」


_____同情してるのかも


私、合唱部やっと辞められた時、友達から言われたの。

何かあったらいうんだよ。何でもいいから頼ってね。


文面的に考えると、友達思いの優しい人。

私からは、同情心から来る偽善者。


「ごめんね、彩ちゃん。こんな、捻くれた私で」


でもさ、優しさって、時には刃物なんだ。


彼女の首には、吉川線によく似た、爪痕が残っていた。



首は絞まるばかり

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