過呼吸多発症【探偵チームKZ】

７『好きなものを好きなだけ』 ページ7

好きなものを好きなだけ愛す。

それが一番、幸せだと思う。


好きな事をして、好きなものを食べて、好きな趣味を貫く。

でも、ふと思うのだ。


合唱部の部員の事を。


私は自分の弱い心から逃げた。

正当防衛すらしなかった。正当逃亡ならした。


でも、私が来なくなった合唱部はどうなのだろう。

私が来なくなった事で、ギスギスしていないだろうか。


脳裏をよぎるのは、優しい笑顔の同級生。

三年生の毒を含んだ棘のある声。

二年生の逆らえない絶望感。


私みたいに、苦しんで手遅れになっていないだろうか。


「Aちゃん……あのね」


部活に行かなくなって二週間近く。
何度も一緒に行こうと言ってくれた、部員に話しかけられる。

「三年生の先輩達……顧問の先生と上手くいってないみたいで……最近は特に仲が悪くて、先輩達も部活をサボったりとかしちゃうの。だから、」


ひゅっ、と何かで喉が締め付けられた。

辛い、苦しい。息苦しい。


次に何が言われたのか、私は知らない。
聞く前に、自分のクラスへ逃げ込んだからだ。

聞きたくない。

まるで、私のせいで先輩と顧問の仲が悪化したと、言われているみたいだった。

あの子の目とどうしても合わせられない。


目が語りかけてくる、あんたのせいだって。
先輩に似てるんだ。


あの、冷えた目。

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