12『言葉に出したら』 ページ12
「Aちゃん……、大丈夫?」
目の前の合唱部員を見て私は目を見開いた。
何故貴方が心配をするのだろう。
「大丈夫って、何が?」
へらへらと薄っぺらい笑みを浮かべながら、首を少し傾ける。
彼女はほっ、と息を吐いて、チャックの緩い口を開けた。
「最近、元気なさそうだし、みゃーちゃんを叩いたって聞いて……ごめんね、みゃーちゃんが何をしたか分からないけど、Aちゃんの事心配してたし、気に掛けてたの。でも、悩みとかあるなら言って?私、話聞くことぐらいならできるよ?友達でしょ?」
あ、無理。
「……え」
生理的に無理っていうか、偽善者の塊みたいで聞いてると吐いちゃいそう。てか、宮野さんの代わりに謝るって何?友達の尻拭いしてあげる良心のある人アピールですかそうですか。
「あ」
何で口開いてんだろ私。
「わた、し、そんな、つもり」
ぐすぐす泣かないでよ偽善者ぐらい腐る程世の中にいるんだから。
「偽善なんか、じゃ」
「じゃあ何ですか?」
慈善活動の一種ですか自称私の友達さん。
「あ、ひっぅ、う、ひど、いよ」
あれ、私今、この子に何つった?
「うわぁ、清水やば」
「可愛そう……」
違う、違うから。
あのさ、私本当は。
「うっさいよー泣かないでー?」
口のチャックが緩いのは私だ馬鹿野郎。
どうしよどうしよう、私が言って私が傷つけて私が泣かせて。
視界が安定しない。焦点が合わない。
ふと、廊下に見えた。
彩ちゃんが目を見開いてる姿。
『死にたい』
口から出たのは違う言葉。
「死ねばいいのに」
「清水!!」
「……っは、い」
______カチッ
「授業中に寝るなとあれほど」
カチ、カチ、カチ
あ、
「手に何を持っているんだ?」
「先生すみませんとても頭痛と目眩が酷く授業を受けられないばかりかクラスメイトに迷惑を掛けるかもしれないので保健室に行ってきます」
先生の声なんか振り切って、ドアを開けて、階段を急ぎ足で降りる。
夢?
そうだ、夢だ。
「バレないバレない」
袖口から見えるのは、銀色の刃。
「死にたい」
もう一本、幸せに線を引く。
「Aちゃん……?」
可笑しいな、まだ授業中なのに。
廊下から見えた彼女は軽快な足取りで。
泣いていた。
私は気づけなかった。
これが彼女からのSOSだったってこと。
『貴方は私の酸素』
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みのみの(プロフ) - ゆっくりね。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» そうですね。頑張らなくてもいいんですよね。ありがとう。アーヤは本当に優しいです。これからも優しく接してくれます。それで後々問題が起こるけれど……貴方にコメント貰えて、少し肩の力を抜いてみようと思いました。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 思い出せてよかったね。頑張っていきしようとすると、もっと苦しくなっちゃうよ。辛い時は、学校休んでもいいんだよ。辛い、苦しい、そんな時は、ズル休みなんかじゃないのよ。アーヤは、優しいね。 (2019年8月20日 19時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» ありがとう。なんて言ったらいいのか、口下手だから分からないけれど、ありがとうございます。腹式呼吸……久し振りにやりました。思い出させてくれて、ありがとう。 (2019年8月20日 18時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 息を吸って、お腹にためて、ゆっくり吐き出したら落ち着くょ。腹式呼吸っていうんだ。よかったら、調べてみてね。我慢はしないで、泣きたいときに、泣いてもいいよ。 (2019年8月20日 17時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白波心 | 作成日時:2019年7月10日 23時