第５話『霜焼け』 ページ5
「いや、本当にいんのかよ」
信じられないと目が語っている上杉君。
大分放心状態な小塚君。
何故だか不思議な顔をしている翼。
興味津々に視線を送る黒木君。
そして固まっている若武。
不満そうに顔を歪ませ、彼女はもう一度私の手を握った。
霜焼け出来そう。
ただでさえ寒いのに。
彼女の冷たさに不満を漏らしながら、事情を話す。
「つい先日、猛吹雪の夜に私の部屋の窓から入ってきたの」
「そんな話し方されると、私が不審者みたいじゃない」
事実だよ。
冷静に心の中で突っ込みをしながら、彼女の話を聞く事にした。
「殺された時の事、うっすらとしか覚えていないわ。ただ、雪が降っていて……後、なんだか息苦しかった。それと」
「それと？」
「今までの記憶、殆ど覚えてないの。自分の名前も住所も、家族の顔でさえ」
「手掛かり０か……無理難題だと思うぞ」
困惑している彼女は、思い出したかの様に顔を上げる。
「踏切……そうよ。駅が近くにあって……」
「甘い匂いがした様な……ケーキ屋さんが近くにあったのかしら」
「駅、ケーキ屋っと」
私は情報をメモしていく。
「あ、猫が沢山集まって来る公園もあったわね」
猫の集会公園。
なんだか、あまりぱっとしない情報。
これだけじゃ捜査が出来る訳がない。
クスクスと、笑い声が聞こえて彼女に視線を送る。
思い出したかの様に彼女は言い放った。
「私、いつも五時ぴったしに花屋に寄っていたのよ。それで、面白い話を聞いたりして……でも、やっぱり店の名前や友達の名前が分からない」
五時花屋と付け足す。
「お花は買ってたの？」
「ええ、勿論。決まって黄色のお花を」
黄色の花。
毎日ずっと買い続けるって、花が好きそうには見えないけど。
人は見た目で判断しちゃいけないって言うし、あんまり良い考え方じゃないよね。
いずれ、朽ちて汚れて逢えるなら
今から行くよ。貴方の魂を喰らって。
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白波心(プロフ) - S・Sさん» ありがとうございます。此方こそ貴方様のお時間を割いてまで読んで頂き有難うございました。コメントのお返事が遅くなり申し訳ございません。 (2020年4月14日 21時) (
レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
S・S - ジーンときてしまいました……すごく面白かったです！楽しい時間をありがとうございました！ (2020年4月13日 14時) (レス) id: 0df261d861 (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - 46さん» ありがとうございます。言葉選びは慎重に行なっていたので、褒められて嬉しいです。返信が遅くなり申し訳ございません。 (2019年11月16日 13時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
46(プロフ) - めっちゃ感動しました！言葉の選び方など天才的です・・・ (2019年11月2日 12時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
風野咲夜 - 番外編も面白かったよ！ (2019年6月10日 17時) (レス) id: ef27f9c60f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白波心 | 作成日時：2019年5月25日 23時
