疑 ページ8
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誰も気付かない筈がない。
事の発端は、俺がミュージックバンクに出演したことだろう。
あれから一週間が経ち、最初から抱えていた違和感が次第に大きくなっていった。
Aくんが放送の次の日から、やけに話し方が片言になっていた。手は少し震えていて、緊張している感じが読み取れた。
心配だったけれどもしかしたら何か親戚関係であったのかもしれないとそこは片付けた。
また次の日、次は目を合わせて貰えなくなった。
その次の日、次は笑って貰えなくなった。
日に日に彼の状態が悪くなっていって、最近は全く会わない。
俺と会わないように時間を調節しているのだろうか。
他の常連さん方や店主に聞くと、"毎日朝早くに来ている"と言う。
俺だけに会わないのはおかしい。
その時に気付いたんだ。きっと"ジョシュア"の存在がバレた。
Aくんがそれをどう受け止めたのかは分からないけれど、避けられているのは目に見えている。
毎朝の楽しみを全て奪われた気がして、ずっと胸の中で蟠りが残っている。
『…どうしたら…』
日に日に改善策を考えても、朝早くから夜遅くまで仕事。考える暇なんかない。
どうしたら彼に会って話ができるのだろうか。
｢…ヒョン、最近ずっと顔色悪いですね｣
『ホシ…』
そういえばメイクヌナにも顔がちょっと青白くてメイクが大変だと文句を言われた。
『…ホシに相談していい？』
｢ジスヒョンが？珍しいね｣
『例えばAさんが居たとします。Aさんと俺は元々仲が良かったんだけど、ある日突然避けられるようになったんだ。理由は多分俺が有名人だから。笑ってくれなくなったり、しまいには会わせて貰えない。どうしたらいいと思う…？』
素直にホシに聞いた。
ホシはいっつも場を盛り上げてくれるムードメーカー的な存在だけど、いざって時は頼れる良い弟。
｢……会いたいんですか？｣
『勿論。なんで避けるようになったのかを詳しく聞きたいし、もう一度笑って欲しい』
｢もしかして調子が悪いのも、思い詰めた顔をしてるのもそのAさんのせい？ちょっと前、朝がイキイキしてたり、よく笑ったりしてたのもAさんのお陰？｣
『…うん。もう全然分かんねぇんだよ…』
頭をガシガシと強くかく。
強くかきすぎて染めたての明るい髪の一本が抜け落ちてしまった。
｢…それって…ジスヒョン、もしかして好きなんですか？｣
『………え？』
｢そのAさんの事、ヒョンは好きなんじゃないんですか？｣
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
