質疑 ページ27
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Aくんが生まれたのが兄が20の年だった。奥さんが3歳年上でね。
私の高校時代は彼ら兄弟と遊ぶのが楽しみだったんだ。
ちょうど美大で彫刻に命を捧げていた頃…おや、何だい?本当だよ。彫刻は私の魂だ。木を削る度に命を削っているんだから。
芸術家とは分かり合えないと思った方が良い。皆んな独特の感性を持っているからね。
ああ、話が逸れたね。続きを。
私は両親とは相容れなくて、彼らが10歳になった頃に妻に婿入りして姓を捨てた。
だからこの櫻内、というのは妻の姓だよ。
その妻も、もう亡くなってしまったけれど。
_____そこまで話して淳司は要の淹れた茶を啜り、小さく息を吐く。
五条もそれに倣って茶を飲み込み、空の瞳をキョロリと正面へ向けた。
「旧姓を、聞いても?」
「ああ良いとも。私の旧姓は、色雲と言う」
「いろくも…色に、空の雲?」
「ああ。美しい苗字だよな」
感慨に耽るように掛けられた言葉に五条は軽く頷き、グラスを揺らしてカランと氷をぶつける。
ーー色雲…伊地知に調べさせるか
そんな事を頭の隅で考えながら、五条は次の話題を引き寄せた。
「君、僕の事知ってただろ。呪術界と関係でもあるの?」
「おや流石に鋭い。ふむ…存在を知っていたかと言われれば首を縦に振らざるを得ないな。ただ呪術界と関係があるか、に関してはノー」
「なら奥さん?」
「おお…凄いな貴方は。その通りだ。妻が術師でね。年上だったんだけど…一昨年任務で亡くなったよ。骨も残らなかった」
「それは…、すまない」
淳司はもう吹っ切れたよと首を振り、改めて五条に向き直る。
「それで?何か聞きたい事があるんでしょう?」
「ああ、そうそう。…まあ端的に言うべきだよね」
頬杖をついてコップの中身をくるくると回していた五条は体を起こし、今度は椅子の背に肘を置いて口を開いた。
「あの子らの両親…つまり君のお兄さんとお義姉さんについて聞きたいんだけど」
「あ〜…っと、それについてなんだけど」
「ん?」
気まずそうに視線を逸らして頬を掻く淳司を前に、五条はパチリと瞬いた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時