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良い兄弟 ページ26

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「それじゃ改めて。櫻内淳司と申します。五条さん、甥が日頃からお世話になっております」


「一色要です。暑い中ご足労頂きありがとうございます」



蝉がジーワジーワと鳴き声を上げる中、クーラーの効いた室内でテーブルを挟んで向かい合い、2人が五条に頭を下げる。

五条も珍しく大人の素振りで礼儀として目隠しを外し、会釈と共に名乗る。



「五条悟です。すみませんね、平日に態々お時間取って頂いて」


「いえいえ。貴方の方が私などより余程お忙しいでしょう?お礼を言うのは此方の方です」


「ははっ、ここは素直に頭を下げられておこうかな」



五条は硬い空気を柔和にするのが上手い。Aは一緒に笑いながら隣の五条をチラリと見上げ心中で感心の表情を浮かべた。

そこから少したわいもない会話が続き、ふと話にひと段落付いた所で五条がAに目配せした。

Aはそれを受けて立ち上がり、要にも声を掛ける。



「要、僕たちはちょっと向こう行ってよう」


「はぁい。淳司さん、大人の話?」


「そんな所かな。君達が不安に思うような話はしないから、安心してよ」


「あははっ、別に不安も何も無いよ。ほら要、行こう。鯉に餌でもやろうか」



久し振りの兄弟だけの時間が嬉しいのか要は花が咲くような笑顔を浮かべ、手招きするAの隣へパタパタと駆け寄った。


2人の足音が遠ざかるのを聞きながら、五条がふっと息を零す。



「良い兄弟だ。要くんは中学生?」


「ええ。今中2で、丁度夏休みですよ。あの子は体が強くないものですから注意しなきゃいけないんだけれども」


「おや。それならAがしょっちゅう電話してるのも頷ける」



仲が良くて羨ましいと淳司は苦笑し、五条は左右対称なその美しい碧眼を眇めて見せる。

その意味を正しく受け取った淳司は乾いた笑い声を落として戯けたような仕草で肩を竦めた。



「私は兄と特別仲が良い訳では無かったから。まあ、歳が離れてたもんですから私がかまって欲しい年頃に兄は思春期だったのでね」


「ああ、やっぱり?失礼だけど今何歳?」


「聞いて驚け、28歳。貴方と同じだ。兄とは8歳差」


「えぇホントォ?ん〜…歳より老けて見えるなぁ」


「ははっ、貴方は規格外に美し過ぎる」



やだ照れちゃう、なんて次は五条が戯けて見せ、淳司は楽しそうに笑った。


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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時

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