少年院 ページ18
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___英集少年院にて。
「雨降るんかな…」
Aの呟きに首を傾げた虎杖だったが、伏黒と釘崎が歩を進めた事でAにも早く進もうと促し歩き出した。
帳に覆われ夜になった空から視線を移して、Aも3人の背を追う。
重い扉を開き、その足を建物の中へと踏み入れた刹那。
___4人の息を飲む音が重なった。
「どうなってんだ!?2階建ての寮の中だよなココ」
「おおお落ち着け!メゾネットよ!」
「むり無理ムリ助けて玉犬俺を守って!」
外観からはあり得ない内部の構造は、全員を困惑させ恐怖させるのに十分な広大さと複雑さで。
扉はどうだと振り向いた伏黒に釣られて3人が振り向き、危惧した通り扉が無くなっている事にギャアギャアと騒ぎ立てる。
音頭を取り始める2人と玉犬に抱き着く1人を、伏黒の声が制した。
「大丈夫だ。コイツが出入口の匂いを覚えてる」
「わしゃしゃしゃしゃ」
「あぁああ玉犬ありがとう!お願いこのまま俺を守って!」
「ジャーキーよ!ありったけのジャーキーを持ってきて!」
「緊張感!!」
先が思いやられると眉を顰めた伏黒に、虎杖がその太陽のような笑顔を向けた。
「やっぱ頼りになるなぁ伏黒は!オマエのお陰で人が助かるし、俺も助けられる!」
その言葉に伏黒は長い睫毛を僅かに伏せ、やがてくるりと振り向いて足を踏み出した。
「進もう」
*
「ひッ……!」
「大丈夫だ落ち着け」
「惨い…」
下半身と泣き別れた上に内臓が飛び出した遺体。
それを見てAはたたらを踏んでしゃがみ込み、釘崎も手を握り締めて視線を逸らした。
伏黒は口元を覆って呼吸を浅くするAの背を摩りながら、遺体の前へ屈み衣服へ手を伸ばす虎杖を見る。
「…この遺体、持って帰る。あの人の子供だ」
「え……でも、」
「顔はそんなにやられてない。遺体も無しに『死にました』じゃ、母親としたら納得できねぇだろ」
ポンポンと背を叩いてAから離れた伏黒が虎杖のフードを引っ掴む。
「あと2人の生死を確認しなきゃならん。その遺体は置いてけ」
その言葉を聞いて虎杖はバカな事をと振り返ったが、伏黒は「置いていけ」と言ったのだと譲らない。
「いい加減にしろ!時と場所をわきま___」
やり取りを見ていた釘崎がAを支えながら立ち上がり、怒鳴って踏み出した瞬間。
「釘、崎……一色…?」
2人の体が、闇へ沈んだ。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時