羨ましい ページ13
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ああ、カッコいいな。羨ましいな。何で自分はああじゃないんだろう。
今まで何度も何度も抱いてきた憧憬と疑問とがまた沸々と浮かび上がってくる感覚。
宿儺の指を取り込む事は、自分にしか出来ない事だから。生き様で後悔するのは嫌なんだ。
そんな事、俺も言ってみたい。
自分にしか出来ない事なんて、特に考えた事すら無かった。必要に迫られた事なんて無かったから。
「カッコいいな…」
「ん?」
「……僕も、あんな_____ッ」
ポロリと零れ落ちかけた本音を、慌てて手で押さえ込んだ。
チラリと隣を見上げれば何も知らないよ何かあったのみたいな顔した五条先生がいて。
"大人"でいてくれる先生に感謝した。
と、その瞬間。
「さあ、君にも問おう。君は何をしに高専へ来た?」
「ひッ……」
「大丈夫。殺されたりしないから」
思わず呼吸を止めた俺の頭をポンポンと撫でて、先生に送り出される。
すれ違い様の悠仁の笑顔が眩しかった。
何とか足を動かして学長の前に立ち、ゆっくりと息を吸い込む。
「…よく、分かりません」
「どういう意味だ」
「どんな答えを求められてるのかが分かりません。高専に来たのは、本当に…呪霊を祓う術を身に付ける為で…」
「これはテストじゃないんだぞ。俺はただ満足のいく答えが欲しいだけだ」
だからその及第点がどこか分からないんだよ
俯いてグッと拳を握り締めた瞬間、何かが向かってくる気配に反射で飛び退いた。
窮地にこそ人間の本音は出るものだ、ってやつか。
「ッて…!」
殴りかかってくる呪骸の攻撃を往なしながら頭を回す。
___呪霊を祓う術を身に付けた、その先
そういえば俺、なんで高専に来ようって決めたんだっけ。何が決め手だったっけ。
「ぃ__ッて!」
「一色!」
やっぱ考え事しながらじゃ無理だ…!
出て来い本音。いや出て来てくれお願いだから。俺痛いの嫌だし泣くの情けないし…
ーー死にたくない
「死にたくない…っ!」
「生半可な覚悟では無駄死にするだけだ。さあ答えろ」
「だって痛いの嫌なんスよ!!」
自分の声が、思ったより大きく響いた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時