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八、迎え ページ8

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窓越しに手が重ねられ、縋るように見つめられると同時に2人の気配が背後に降り立ち、漸く時間がまた動き始めた。


ハッとして一歩引くと少女は窓を開き、3人揃って目の前に膝をつく。



「木ノ葉の里よりお迎えに上がりました。A様」


「……ヒルゼン様の里の方…?」


「はい。我々と共に木ノ葉においで頂きたく、参上致した次第です」



自然に反応した所を見ると、A様で間違い無いらしい。

A様は胸元でぐっと両手を握り締めて随分長いこと考え込んでいたが、大きく深呼吸した後、右手を此方に向かってバッと差し出した。



「私を…、私を此処から、連れ出して!」


「はっ」



その手を取って短く返した返事に、彼女は噛み締めるような笑みを零した。

その顔はやはり、大切に育てられてきた箱入り娘の顔ではなかった。









ーーー









感情を乱したらいけない。

抑えて、押さえて、おさえて。


いつからか、それが普通になっていた。それが当然で、それを破れば人が傷つくのだと言い聞かせていた。

私が生まれた時の事など何も知らないし、両親の顔も写真で見たり、あと数回会ったりしたくらいで。

自分を抑え込んで、ただ退屈な日々を過ごしていくだけ。


ずっと、そう思っていたけど







「木ノ葉の里よりお迎えに上がりました。A様」







私と同じ白銀の髪を揺らして私の目の前に現れた貴方は、本当に美しく見えた。

私とは違うと思った。けれど同じ様にも思えた。その瞳は…何かに囚われている瞳だと。


私はどうするべき?

居なくなったら家の者が困るだろうか?

だけどそうしたら…このまま此処で、いつ来るか分からない救いを求めて待ち続けるの?

今日帰したら、もうこの人達は来ないのかな…




ゆっくりと目を閉じて、深呼吸する。



ーー私が、決めるの。



結論を出したら、体は案外素直に動いてくれた。

右手をバッと差し出して、取るように促して。



「私を…、私を此処から、連れ出して!」


「はっ」



何処かの御伽噺に出てきそうな言葉を口にすれば、白銀の彼は跪いたまま私の目を見て手をそっと取り、しっかりと頷いた。




___これが人生最大の決断で、英断だった。




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九、逃避行→←七、戦闘



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Rai(プロフ) - 瑠璃烏さん» ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - Raiさん» 機械がてんでダメなので手間取りそうですが…(ー ー;) (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 恐悦至極でございます(T^T)こんな自己満小説を楽しんで頂けてうれしいです!お誘い、ありがたく受けさせて頂きます。ありがとうございます! (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - やり方はペーストに画面そのまま押し、通常検索など出来る思いますこの作品も大好きでいつも読ませて頂いていますこれからの作品も頑張って下さい! (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - 初めましてもしもご迷惑無ければご参加出来たら思いますもし無理でしたらお断りしても構いません。イベント後「https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」「 あなたの小説読ませて下さい。」 (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年10月26日 18時

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