五、任務 ページ5
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「やめて!来ないで!お願いだから!」
「A様っ、父上がいらっしゃっているのですよ!」
「今更何をしに来たって言うの!私もう15歳になったのよ!今更何をしに来たの!」
自分の両手を握り締め、足元に広がる薄氷に怯えながら叫ぶ。
両親の顔など覚えてはいなかった。こんな力を持った厄介な娘を隔離しただけの非道な両親だと信じて疑わなかった。
それよりも、この力は人を傷つける。
仮にも親を傷つけたいなどとは思わないし、そもそも会う必要性を感じない。
「今日は駄目だと伝えて!今は無理!無理なの!!」
一歩近づけば氷が面積を広げるその状況を良しとしない従者は、苦渋の表情ながらも頷き部屋を去った。
しんとした部屋の中、数歩下がってベッドにドサリと座り込む。
床を踏む度に割れる氷は、まるで自分の心のようで。
___私は此処で、救済を待っている。
ーーー
暗殺戦術特殊部隊。通称暗部にて任務を熟す事にはもうとっくに慣れ、部隊長を務めるようにまでなった頃。
火影様から呼び出されて仰せつかった任務は、今までのものとは毛色が違った。
曰く、「ある少女を連れ出して来て欲しい」
一緒に呼び出された2人も驚いているのが分かる。驚いているというより、ポカンとしていると言うのか。
「ある少女、ですか」
「うむ。なに、普通の少女をと言うのでは無い。まあ聞け」
小さく頷いて続きを待てば、三代目は要点を纏めて話し出す。
その少女は大名の孫に当たる子で、不思議な力を持っているらしい。故に赤ん坊の頃から隔離されて育ち、森の中の屋敷で密かに暮らしているんだとか。
そこまでを話されて、それでもよく分からずに何も答えずにいると、三代目は机の書類に目を落としたまま続ける。
「御両親も、泣く泣く手放したそうなんじゃがのう…少女にとっては自分を捨てた親じゃ。つい最近会いに行ったら、追い返されたらしい」
「それで…何故連れ出すのですか?」
「その父上の統埜様がの、閉鎖空間で育って欲しい訳ではないと嘆いているらしい。しかし自らが行っても無駄ならば、いっそ木ノ葉に拐って欲しいと」
「成る程。では我々の任務は、その少女を此処へ連れて来る事ですね」
「うむ。頼んだぞ」
3人で声を揃えて返事をし、部屋を後にした。
___その奇妙な任務は、この先長いことオレを悩ませる事となる。
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Rai(プロフ) - 瑠璃烏さん» ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - Raiさん» 機械がてんでダメなので手間取りそうですが…(ー ー;) (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 恐悦至極でございます(T^T)こんな自己満小説を楽しんで頂けてうれしいです!お誘い、ありがたく受けさせて頂きます。ありがとうございます! (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - やり方はペーストに画面そのまま押し、通常検索など出来る思いますこの作品も大好きでいつも読ませて頂いていますこれからの作品も頑張って下さい! (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - 初めましてもしもご迷惑無ければご参加出来たら思いますもし無理でしたらお断りしても構いません。イベント後「https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」「 あなたの小説読ませて下さい。」 (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年10月26日 18時