二二、熱がり ページ22
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魚の皮が弾けて、油がジュワッと音を立てる。
その様子をこれまた興味津々という様子で眺めているAに、カカシがどこか呆れた風に声を掛けた。
「…なんでそんなに離れてるんです?」
眺めると言っても1.5mは離れているAにそう声を掛けると、その表情は困惑に染まる。
「えっ…だって、火が熱いから…」
「言うほど熱くもないでしょ。ほら、そろそろ皿に移すから」
「は、はい」
異様に火に近付こうとしないAを怪訝に思いながらも皿を取るようにと声を掛ければ、Aは素直に頷いて手を伸ばした。
『氷が彼女を…___』
ふと三代目の言葉が頭を過って、不自然に思われない程度に彼女を見遣る。
氷に関係する力を持っているから、熱いものが苦手なのか…?
いや、それだと風呂に入れない事になる。
いやでも風呂の場合温度を調節すれば良いのか…
色々な考えが頭を巡りながらも、網の上に載る魚をさっさと皿に移して机に運ぶよう頼んだ。
「いただきます」
「い、いただきます」
机を挟んで向かい合わせに座り、家主であるカカシに続いて手を合わせたAがソワソワとカカシを気にし出す。
まさか食事の時まで口布を取らないという事は無いんだろうけど…
お風呂から上がってきた時も口布をしていたから、見てはいけないのかと思ってしまう。
「!」
「…? どうかしましたか?」
素顔を晒した彼を見て、知らず呼吸が止まる。
白い肌や通った鼻筋、口元に至るまで、何と言うか…綺麗だ。薄々感じてはいたけれど、綺麗な面立ち。
口元の黒子は決して違和感なく、彼の整った面立ちに妖艶さを重ねている。
思わず見惚れているAの額を、彼女に負けず劣らず白い手がコツンと小突いた。
「きゃっ」
「早く食べないと冷めるよ。熱いのが苦手なら冷ましながら食べて」
「あ、はい」
慌てて箸を取ったAが、味噌汁を少し飲み込んでから躊躇いがちに口を開く。
「あ、あのう…」
「ん?」
「偶に、敬語抜けてないです…」
「いきなり変えろって言われても急に完璧には無理だよ。地位を考えたらA様のが上なんだし。ん…A、か」
ふわりと微笑んで名前を呼ばれ、胸がドキンと大きく音を立てる。
「ま…少しずつ、ね」
「は、はい…」
そんなAの様子を見てカカシはまたクスクスと笑い、自分でも自覚無く慈しみの表情を向けるのだった。
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Rai(プロフ) - 瑠璃烏さん» ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - Raiさん» 機械がてんでダメなので手間取りそうですが…(ー ー;) (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 恐悦至極でございます(T^T)こんな自己満小説を楽しんで頂けてうれしいです!お誘い、ありがたく受けさせて頂きます。ありがとうございます! (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - やり方はペーストに画面そのまま押し、通常検索など出来る思いますこの作品も大好きでいつも読ませて頂いていますこれからの作品も頑張って下さい! (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - 初めましてもしもご迷惑無ければご参加出来たら思いますもし無理でしたらお断りしても構いません。イベント後「https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」「 あなたの小説読ませて下さい。」 (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年10月26日 18時