十七、不思議な力 ページ17
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「A様、そろそろ人里に入ります」
テンゾウにそう言われてから少し。
ザワザワと人の話し声が聞こえてきて、あの夜歩いて回った里を思い出す。
着物に毛が着かないようにかくっ付かず隣に座っているカカシさんの忍犬を撫でながら、もう片方の手を握りしめた。
人の声がする
私が姿を見せたらどんな風になるんだろう…
驚くかな?驚くよね…
そもそも牛車なんて普通は通らないだろうし
姿は見せないのに不安になってきて、手入れされた滑らかな毛並みをを撫でる手が止まる。
犬は人の不安を感じ取ると言うけれど、どうやらそれは本当らしい。強張る私の手に頭を擦り付けてくる。
「!? いやっ」
そちらに目を向けた所で目に入ったものに、思わず声を上げて手を離した。
氷が…
真っ白になっていく頭の隅で、恐怖が呼吸を荒くさせる。
「A様?」
「どうかされましたか、A様」
牛車の傍を歩いていたテンゾウと猿面が、廉を隔てて声を掛けた。
Aはその声にビクリと肩を跳ねさせ、声も出せぬまま何度も首を振る。
しかし中の様子など見ることの出来ない2人は返事がない事を怪訝に思い、そっと廉を避けて中を見た。
「来ないで!」
「A様…!?」
「駄目!お願い離れて!」
屋形の中の様子に、2人は思わず息を飲んだ。
Aを中心に広がる薄氷が、驚く程に屋形の温度を下げていた。屋形の隅に身を小さくするAは怯えた様子で離れてと繰り返す。
2人がどうするべきかと焦りを覚え始めたと同時に、誰かの手が2人の肩を引く。
「A様、どうかされましたか?」
「ぁ……か、カカシ、さん…」
「まさか、忍犬が失礼を?でしたら申し訳ございません」
屋形の凍りついた様子に動じること無く言葉を紡ぐカカシを目の前にして、Aの体から段々と緊張が解けていく。
じわりじわりと溶けていく氷の中で、Aがその頭をゆるゆると左右に振った。
「……いいえ。ごめんなさい、何でもありません」
「そうですか。ところで、直ぐそこが火影邸です。此処から先は牛車では通れないので、歩いて頂く事になりますが宜しいですか?人払いは済んでいます」
「あ…もうそんな所に?分かりました」
一言二言交わすと直ぐに落ち着きを取り戻し、驚くテンゾウと猿面に手を貸すよう促して、カカシは再びその場を離れた。
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Rai(プロフ) - 瑠璃烏さん» ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - Raiさん» 機械がてんでダメなので手間取りそうですが…(ー ー;) (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 恐悦至極でございます(T^T)こんな自己満小説を楽しんで頂けてうれしいです!お誘い、ありがたく受けさせて頂きます。ありがとうございます! (2020年11月5日 12時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - やり方はペーストに画面そのまま押し、通常検索など出来る思いますこの作品も大好きでいつも読ませて頂いていますこれからの作品も頑張って下さい! (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - 初めましてもしもご迷惑無ければご参加出来たら思いますもし無理でしたらお断りしても構いません。イベント後「https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」「 あなたの小説読ませて下さい。」 (2020年11月5日 11時) (レス) id: 1de574fab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年10月26日 18時